反射とCPGとプレ・プログラム反応 - 趣味で学問

反射とCPGとプレ・プログラム反応

動物行動を考えるためには身体動作の考察が必要で、身体動作を考えるためにはその要素にあたる機構の考察が必要です。今回は神経生理学的な身体・神経機構のうち、反射、セントラル・パターン・ジェネレーター(CPG)、プレ・プログラム反応の三つの考え方を紹介することにします。といっても、どの考え方もその機構の解明が現在進行で進められている段階ではあるのですが。

1.反射

反射は生物学的用語としての反射のことで、脊髄反射などのことです。一般に、知覚器→感覚神経→介在神経(脊髄)→運動神経→作動器の順に情報伝達することで起こります。有名な膝蓋腱反射のほか、熱いものを触った瞬間に手を引っ込めるなどの動作も反射に含めることができますが、多様な身体動作のどれを反射に含めるか分類するのは、それほど簡単ではありません。反射の概略は高校生物ページに譲ることにします(23/12/01時点で未作成)。

反射は仲介する神経細胞の数で単シナプス反射(介在神経一つ)、寡シナプス反射(複数の介在神経が介入)に分類されます。このうち神経生理学的な機構がはっきりわかっているのは単シナプス反射のみで、先ほど挙げた膝蓋腱反射などのごく一部の身体作動がここに含まれます。つまりはほとんどすべての反射とみなされる身体作動が、神経生理学的な機構の解明があまり進んでないことを意味します。制御工学のフィードバック機構などを用いたモデルもいくつか考案されています。

2.セントラル・パターン・ジェネレーター(CPG)

セントラル・パターン・ジェネレーター(CPG)、は脊髄にある複数の神経細胞間の協働による種固定的身体動作の基盤(歩行動作などの基盤)のことです。この概念は主に非線形科学において振動子によるリズム現象として説明されていることが多いです。それぞれの神経細胞が振動子として働き、これが複数個相互に接続されることで自律的な興奮の発信を行います。歩行動作などがCPGによる自律的な作動が基盤になっていることが示唆されていますが、その機構が明らかになったとまでは言えません。歩行などの動作は多数の筋肉や関節が関与しています。脊椎は多数の脊椎骨が連なることで成り立っていて、一つの脊椎骨から出る、または入っていく神経接続が一つの身体部位を支配していると仮定しても、歩行などはこれら一単位がいくつも協働して可能になるため、全体としての作動の解析は容易ではありません。脊椎と脊髄の概要、それからCPGとの関係などはページを改めて紹介する予定です(23/12/01時点で未作成)。

3.プレ・プログラム反応

「反射」に関連して、外乱に対する身体動作の安定性をもたらすような、半自動的な反応があります。この反応は、長潜時反射、機能的伸張反射、誘発反応、プレ・プログラム反応など、様々な呼び方がありますが、ここではプレ・プログラム反応を使うことにします。

具体例として、つまずきに対する修正反応を挙げることにします。歩行の最中に予期できない刺激を足にうけたとき、遊脚期では仮想の障害物をまたごうとするような屈筋反射が発生します。この反応は協調的で機能的に適切なパターンをもっており、刺激の種類に対して比較的無関係であることから、単純な反射による単一筋の収縮ではなく、歩行の修正反応として現実に役立つものと考えられます。

またプレ・プログラム反応では、随意的に応答の仕方を変化させることができます。外乱に対する修正反応であることと合わせ、歩行などの身体動作を環境と協調させる、あらかじめプログラムされた反応と考えることができます。歩行動作の生成そのものはCPGが担っているとすると、脊髄に対するより上位の中枢からの下降性の情報のように思えますが、生理学的な対応物は明らかになっていません。

  • 参照文献1:多賀厳太郎『脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達』(金子書房)
  • 参照文献2:マーク L・ラタッシュ『運動神経生理学講義 細胞レベルからリハビリまで』(笠井達哉/道免和久監訳、大修館書店)

<< 脊椎動物の身体動作 Reafferenzの原理 >>

ホーム » 心理学 » 動物行動学 » 反射とCPGとプレ・プログラム反応

むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA