動物行動(オートポイエーシス論) - 趣味で学問

動物行動(オートポイエーシス論)

オートポイエーシス論で記述されていない概念の一つに、動物行動があります。動物行動の詳細は動物行動学のページ(21/09/21時点で未作成)に譲るのですが、動物行動をひとまず「ある特性を伴う身体動作の連鎖」のこととします。「行動」という対象化された言葉を使うと忘れがちになるのですが、それぞれの動物行動は動作の連接という時間的経緯を伴う一全体としての現象です。細胞システムも多細胞生命体システムも、「システム」と名付けられているものは、プロセスが連鎖しうる限り永続して存続します。動物行動は身体(多細胞生命体システムの構造)の状態変化に、固定性や可変性の観点から人間が区切りを入れたものであり、行動システムや本能システムのような使い方はやめておくべきでしょう。以上の点に関する注意は必要ですが、動物行動を「身体動作の連鎖の閉域」として記述、図示することは可能と思われます。

1.動物行動の図式

オートポイエーシス論をおさらいすると、システムの本体は産出プロセスの閉域で、眼に見える対象は構造でした。細胞システムも多細胞生命体システムも社会システムも、「細胞」や「多細胞生命体」や「社会」のように対象化されて現れるものはみな構造です。したがってここでも動物行動は構造として現れてきていると考えることにします。

動物行動を「身体動作の連鎖の閉域」とみなすと、構成素は身体の状態で、産出プロセスは先の身体状態の変位を触媒として次の身体状態を産出するはたらきです。神経系を持つ動物の場合は身体(多細胞生命体システムの構造)の状態の変化を攪乱として次の身体の状態を産み出す神経系の働きを、動物行動の産出プロセスとみなすことができます。以上より、図1のように細胞システムと同様の図で動物行動を表現することができます。

外側の円が各動物行動(構造)です。一時点前の身体の状態が基体で、この状態が変換されて構成素である次の身体の状態(身体部位の位置変位)が産出されます。そして神経系における、ある身体の状態を反映して次の身体の状態変位をもたらす働きが産出プロセスです。

2.動物行動の図式化の問題点

図1による図式化はいくつかの問題点を含んでいます。下にその問題点を簡単にまとめておきます。

2.1 本能行動、欲求行動(学習、知能行動)

本能行動は種に生得的に固定された行動であり、環境との関わり合いの中である条件を満たすと、種特異的に固定された身体動作の連続が現れます。その個体にはその個体の発生の歴史があるにもかかわらず、個体を超えて種で共通する行動が現れます。このことを説明すべきですが、現時点では図式化のみならず概念的にも記述できていません。

欲求行動(目標志向的行動)は後天的に可変な行動のことで、学習と知能行動もここに含まれます。ある程度神経系の発達した動物の行動は,種に固定的な刺激応答事態である「本能行動」と,後天的に可変である「欲求行動(目標志向的行動)」の連環として成り立っています。本能行動連環の中に新たな行動が差し挟まれて、一全体として行動連環が環境との関わり合いを保つ、という事態を、オートポイエーシス論的に説明する必要があります。

2.2 意識・表象、認識、感情の浸透

動物行動において、知覚器と作動器をつなぐ神経系の作動ですべての動物行動が説明可能か明らかではありません。心的作用が行動に関与するか、動物行動学分野において人によって考え方が異なっているのですが、コンラート・ローレンツは動物の知覚像(意識・表象)や認識が動物行動に関与していると考えています。何らかの心的作用が関与すると考えるのであれば、身体や動物行動への作用を図示する必要があります。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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