1.オートポイエーシス論を事象にどう適用するか
オートポイエーシス論はもちろん具体的な事象に適用するために考案されたのですが、その適用においては試行錯誤が続けられている段階です。そもそも人によって概念の定義にゆらぎがある状態なので、当然適用の仕方においても各人で違いが生じています。
マトゥラーナ・ヴァレラは生命理論としてオートポイエーシス論を構築しました。二人は神経生理学者だったので、神経生理学的知見を基に生命システム論を考案しており、生命体のみでなく意識や認識への適用も視野に入れていたと思われます。社会システムへの適用を試みたのは、ドイツの社会学者ニコラス・ルーマンです。ルーマンにより多方面への適用の筋道がつけられたと言えるのですが、ルーマンの言葉の使い方がマトゥラーナ・ヴァレラ以上に独特だったため、その後の議論の錯綜の土台をも作ってしまいました。
オートポイエーシス論を適用して具体的な事象を説明するには、見えているその対象とそれを作り出す働きが何か、見定めなくてはなりません。働き(産出プロセス)が連鎖して自分で回り続けること(閉域形成)がオートポイエーシス・システム本体なので、まずは産出プロセスには何が該当するか考える必要があります。そのため最も重要な概念は、産出プロセスによって産出される構成素です。また人間に観察可能な構造も重要な概念となります。構成素と構造が決定できれば、そのシステムの記述は半分以上ができたとみなしてよいでしょう。しかし複雑に現れる現実においてこれらを定めるには、階層性や自己言及性を考慮して体系化を行う必要があります。その結果、オートポイエーシス論の概念の組み合わせ方により、様々な記述が存在しうることになります。
2.三つのシステム
ルーマンはオートポイエーシス・システムとして三つのシステムを考えています。大きく分けて有機体、社会システム、心的システムです。有機体は生命体のこととみてよいので、細胞システムと多細胞生命体システムのようにさらに分類することが可能です。社会システムや心的システムも同様に、より細分化して記述することができるでしょう。
このサイトではまず、現在最も具体的に考察されている山下和也による記述を紹介したいと思います。山下はルーマンをもとに、生命システム、意識システム、社会システムの三つに大別して、オートポイエーシス論による説明を試みています。
3.参照文献
- 参照文献:山下和也『オートポイエーシス論入門』(ミネルヴァ書房)

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