オートポイエーシスの四つの性質 - 概念 - 趣味で学問

オートポイエーシスの四つの性質

オートポイエーシス・システムの性質を以下の四つにまとめることができます。①個体性、②自律性、③単位体としての境界の自己決定、④入力・出力の不在です。

1.個体性

一つのオートポイエーシス・システムにおいて、その産出プロセスの閉域が個体です。一度成立したプロセスの閉域は、それ単一でしかありえないので、同じ閉域を保つかぎり自己同一性を保つことになります。社会システムへの適用などの場合を考えると、単一性や自己同一性の言葉の方がよいかもしれません。一つのオートポイエーシス・システムを「単位体」の言葉で呼ぶ場合もあります。構造も他と区別される個体性を持つのですが、それはむしろ作動そのものであるシステムに付随する個体性です。

2.自律性

オートポイエーシス・システムは、自らの作動で形成され続ける産出プロセスの閉域なので、システムの状況や存続を決定するのはシステムの方です。たとえ爆発で吹き飛んだようなときでも、システムの消失を決定したのはシステムの方です。同じ爆発でも恐竜とかならケガですんだりするかもしれないので、あくまで作動を維持するかどうかはシステムの側に依存するということです。

システムの自律性の帰結として、システムを外部から思い通りにコントロールすることはできず、環境からの浸透による間接的な影響をもたらすことしかできません。自律性のおかげで、たとえ他の条件が同じでも反応の同一性が保証されないためです。

3.単位体としての境界の自己決定

まず「単位体」(マトゥラーナ)というのは一つのオートポイエーシス・システムのことです。システムはその作動によって、どこまでが自分に属するかを自分自身で決めているので、自己と環境の境界を自分で決定していることになります。言い方を少し変えると、閉域が形成されたときに、システムの自己(プロセスの閉域)とそれ以外が同時に区切られる、ということです。

産出プロセスの閉域形成という基本性質から、オートポイエーシス・システムの中に部分と全体の関係を考えることが難しくなります。オートポイエーシス・システムはそれ以上分割することができず、一見分割されて維持されているように見えても、複数の異なるシステムが実現されていることになります。システムの分化や統合に関しては「構造的カップリング」で説明します。

4.入力・出力の不在

オートポイエーシス論において理解が難しいと言われるものの一つが、この「入力と出力の不在」です。これはオートポイエーシス・システムが閉鎖系だと言われることと、ほぼ同様のことを意味しています。実は「閉鎖系」および「入力・出力の不在」という表現を使わなくても、この事態を説明可能です。オートポイエーシス・システムが閉鎖系だと主張されるのは、第二世代システム(非線形科学)が開放系を強調していたので、それに対抗して閉鎖系を主張したという側面があると思われます。

入力と出力の概念が重要となってくるのは、人によって作られた機械(アロポイエーシス・システム)においてです。もともと機械は入力に対して決められた出力をするように設計されているからです。しかしオートポイエーシス・システムでは、産出プロセスの閉域がシステム本体なので、ここへ入力して出力するということがよくわかりません。産出される構成素と産出元の基体も環境に属するため、システムへの入出力は産出プロセスの挿入と排出になりますが、これはよくわからない事態です。

やはり細胞システムを例にとりましょう。細胞システムだと、有機物の代謝経路などが細胞システム本体で、細胞膜とかは構造です。人間が観察している内と外は細胞膜という構造の内と外であって、構造を作り出している代謝経路の内と外とを同様に考えることはできません。入力と出力という概念は、その対象が内外の区別を持つ場合に意味を持つので、そもそもオートポイエーシス・システムのようにシステムの内部環境と外部環境の区別がつかないときには意味を持ちません。入力と出力という概念が意味を持つのは、システムの構成素と構造に対してです。細胞膜という構造で物理空間上に区切られた境界の間では、確かに物質の行き来があります。

以上をまとめると、環境を巻き込んで自らが存続可能な環境を作るというオートポイエーシス・システムの性質により、システムの内部環境と外部環境の区別がつけられないオートポイエーシス・システムにおいては、入力と出力の概念を適用することが不適切です。「入力・出力の不在」というよりも、入力と出力を考える必要がない、ということだと思ってください。

関連事項:オートポイエーシスの定義(第二世代システム)

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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