反比例
y=ax(aは定数)の形のxとyの関数を比例と呼びます。この式では、変数yは定数aと変数xの積の形をしています。それに対してy=a/xというxで割った形の関数を反比例と呼びます。
具体例、
\begin{align}
y=\frac{6}{x}…①
\end{align}
の式で考えてみます。いくつかのxの値に対するyの値を表1に示します。
表1 y=6/xを満たすxとyの値
x
| -6
| -3
| -2
| -1
| 1
| 2
| 3
| 6
|
y |
-1
| -2
| -3
| -6
| 6
| 3
| 2
| 1
|
まずはxが0より大きい場合を見てみます。表1ではx=1のときy=6で最大で、x=2のときy=3、x=3のときはy=2というふうにxの値が大きくなるごとにyの値が小さくなっていきます。式を見て考えてみると、y=6/xという関数は6をxで割っているので、割る数xが大きいほど小さくなり、割る数xが小さいほど大きくなります。
xが0より小さいときは、xが0より大きいときの値に-がついた値になっています。表1の値をグラフの上に打ってみると、図1(a)になります。xの値を整数だけでなくもっと細かくとってみると、①の式は図1(b)のような二つの曲線としてxy平面上に描けることがわかります。
0でわることはできないので、xが正のときは、0に近づくほど、つまり小さくなるほどyの値は大きくなり、逆にxの値が大きくなるほどyの値は小さくなります。xが負のときは、0に近づくほど(大きくなるほど)yの値は小さくなり、xが小さくなるほどyの値は0に近づいていきます。
y=axとy=a/xはそれぞれ、比例と反比例という対立する言葉で表現されています。ここで
\begin{align}
I=\frac{V}{R}…②
\end{align}
の関数を使ってこの二つの関数の特徴を考えてみましょう。I、V、Rの三つの文字を使ったのには理由があって、Iを電流、Vを電圧、Rを抵抗とすると、実際の電気回路でも②の関係式が成り立っています。電圧や電流を負の値で考えることもできるのですが、簡単のためIもVも0以上とします。
まずRを固定して定数とみなしてみます。そうすると1/Rも定数になって、②の式はy=ax(I=(1/R)V)と同じ形になっています。流れる電流Iは電圧Vの比例関数で表現されているので、電圧Vが0のときは電流Iも0で、かける電圧に比例して流れる電流が大きくなっていくことを示しています。今度はVを固定して、回路の中の抵抗の値を変えることにします。そうすると、y=a/x(I=V/R)つまり反比例の式と同じ形になっています。抵抗Rの値が小さいほど大きな電流Iが流れて、抵抗Rが大きいほど(Rに反比例して)、流れる電流が小さくなることを示しています。この式の形から、電流Iは分子に電圧Vがかかった形をしているのでVに比例して大きくなり、抵抗Rで割った形をしているのでRが大きくなるほど小さくなっていくことが示されています。
こんなふうに式の形を見て関数の挙動が予測できると、本に書かれた数式が何を表現しているかを読み取るのに役立つし、逆に現実の対象をどのように式の形で表現したらよいか見つけるのにも役立ってくれます。実際の現象における量的関係を数式表現すると、眼がくらむほどの複雑な形になることも多いのですが、それでもこういった地道な作業の繰り返しで、複雑な式の意味が見えてくるようになるのも確かです。
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