確率変数の変換 - 趣味で学問

確率変数の変換

確率変数に関わる式で重要なものに、確率変数の変換と呼ばれるものがあります。先に式を書いておきます。

\begin{align} Y=aX+bのとき\\ E(Y)=E(aX+b)=aE(X)+b\\ V(Y)=V(aX+b)=a^2V(X)\\ \sigma(Y)=\sigma(aX+b)=|a|\sigma(X) \end{align}

この式は元の確率変数XからY=aX+bの形の新しい確率変数を作ったときに、元の確率変数Xの平均E(X)、分散V(X)、標準偏差σ(X)を使って、新しい確率変数のE(Y)、V(Y)、σ(Y)を計算できますよ、というものです。

この式の導入は割と簡単にできますので、そちらも示しておきます。新しい確率変数でも元の確率変数と同じ確率を持つので、定義式に従って式を立てて式変形していくと上の形がでてきます。

\begin{align} E(aX+b)=(ax_1+b)\cdot p_1+(ax_2+b)\cdot p_2 + \cdots + (ax_n+b) \cdot p_n\\ =(ax_1\cdot p_1 + ax_2 \cdot p_2 + \cdots ax_n \cdot p_n)+(b\cdot p_1 + b\cdot p_2 + \cdots + b\cdot p_n)\\ =a(x_1\cdot p_1 + x_2 \cdot p_2 + \cdots + x_n \cdot p_n)+b(p_1+p_2+\cdots + p_n)\\ =aE(X)+b\\ V(aX+b)=(ax_1+b-\bar{x})^2\cdot p_1+(ax_2+b-\bar{x})^2\cdot p_2+\cdots+(ax_n+b-\bar{x})^2 \cdot p_x\\ =\sum_{i=1}^n (ax_i+b-\bar{Y})^2 p_i\\ =\sum_{i=1}^n (ax_i+b-(a\bar{X}+b))^2 p_i\\ =\sum_{i=1}^n (ax_i-a\bar{X})^2 p_i\\ =\sum_{i=1}^n a^2(x_i-\bar{X})^2 p_i\\ =a^2\sum_{i=1}^n (x_i-\bar{X})^2 p_i=a^2V(X)\\ \sigma(aX+b)=\sqrt{V(aX+b)}=\sqrt{a^2V(X)}=|a|\sqrt{V(X)}=|a|\sigma{(X)} \end{align}

この式は使えることができれば問題ないです。平均は定義式から考えて、YではXがa倍されているのでE(X)でもa倍されてaE(X)に、+bで全体が底上げされているのでYでも同じように底上げされる、くらいに解釈しておけば覚えやすいかもしれません。分散も定義式から考えて、(Xi-Xバー)2のところで二乗されるのでa2E(X)になって、+bのところは全体の値が底上げされても平均との差はまったく変わらないので分散には影響しないからV(Y)の式に現れない、くらいの解釈でよいでしょう。標準偏差は分散の√をとったものなのでそのままです。ただし√a2(a2の√です)は、二乗を先にして√をとることから|a|なので、ここは気を付ける必要があります。

この式は、正規分布を標準正規分布に変換するために使われていたりして重要な式ですが、普段これを使って変数変換するとかはそんなにないと思います。計算練習のために一題やっておきます。1枚のコインを2回投げて表の出る回数を確率変数Xとし、新しい確率変数Y=3X+2を作るとします。Xの確率分布は下の表になります。

X012合計
P(X)1/41/21/41

そしてE(X)、V(X)、σ(X)の計算は下の通りです。

\begin{align} E(X)=0 \cdot \frac{1}{4} + 1 \cdot \frac{1}{2} + 2 \cdot \frac{1}{4}=1\\ V(X)=(0-1)^2\cdot \frac{1}{4} + (1-1)^2\cdot \frac{1}{2} + (2-1)^2 \cdot \frac{1}{4}=\frac{1}{2}\\ \sigma(X)=\frac{1}{\sqrt2} \end{align} これらの値と上の公式を使ってE(Y)、V(Y)、σ(Y)を計算すると、下のように計算できます。 \begin{align} E(Y)=E(3X+2)=3E(X)+2=3\cdot1+2=5\\ V(Y)=V(3X+2)=3^2V(X)=9\cdot \frac{1}{2}=\frac{9}{2}\\ \sigma(Y)=\sigma(3X+2)=|3|\sigma(X) =3\cdot \frac{1}{\sqrt2}=\frac{3}{\sqrt{2}}\\ \end{align}

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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