哲学を学ぶにあたって
もちろん世の中に優れた入門書はいくつかあります(たくさんはない)。しかしそんな優れた入門書であっても、やはり素人には敷居が高すぎるのです。しかも玉石混淆の哲学入門書からどうやって当たりを引くのか。運が悪いと最初の一冊であきらめたり、哲学をとんちと勘違いしたりしてしまう人もいるんじゃないでしょうか。
私は運よく優れた入門書にわりと早く巡り会えたというのはあるんですが、よくわからないまま読み進めることにあまり抵抗がなかったのも、結果としてうまくいった要因なのでしょう。哲学を読むコツは、わからないことをあまり気にしないことです。だから今必要に駆られて必死にネット検索している人とかには、どうにも相性が悪いかも。でもまあ、そんな人のためのページを作れたらなあ、とも思ってます。
そしてさらに重要なことは、わからないところをわかった気にならないことです。私は工学系の人間なのですが、工学者の哲学理解ってけっこうひどいんですよね(自分のことは棚にあげてみる)。マッチポンプというか、研究室という閉じた世界でどんどん妄想の世界に入り込んでいって、支離滅裂な解釈を正しいと思い込んでしまうことがあるみたいです。恐ろしいことに、わりと身近なことなのです。
ずぶの素人のはずの私ですが、幸運に恵まれながら数十冊くらい読んでみると、おぼろげながら哲学がどういう学問かわかってきます。それから哲学者がひそかに導入してしまっている臆見があるみたいで、それが自分の考え方との嚙み合わなさを生んでるみたいです。別に私がそのことを見つけたんじゃなくて、当の哲学者が自己反省で指摘してくれているのですけどね。哲学者であるからこそ書けないことがあって、逆に哲学者ではない、それどころかいわゆる文系とはまったく縁がなかった私だからこそ書ける、哲学入門サイトがあると思っているのです。
私の話はこれくらいにして、この哲学入門サイトの構成についてここで軽く説明しておきたいと思います。一般の西洋哲学史にならって、古代ギリシア・ローマ哲学、中世哲学、近世哲学、近代哲学の順にページを構成していく予定です。現代の哲学については、もとになっているブログで記事がたまってきたら、こちらにまとめようと思います。
古代の哲学は一言で言うと、世界のはじまり(アルケー)はなにか、と問うことです。イオニア地方からはじまり、有名なソクラテス、プラトン、アリストテレスを経て、その影響は現代の哲学にまで及んでいます。中世哲学もやはりプラトンとアリストテレスの多大な影響のもとにあります。キリスト教神学との関係を抜きにしては中世哲学は語れないでしょう。近世哲学は現在の心理学などに直結しています。知覚や理性とはなにかが主題ですが、知性に対する絶対の信頼をもとにして構築されているといってよいでしょう。その根源たる知性そのものに懐疑が向けられているのが現代の哲学の特徴と言えます。
このサイトの内容のもとになった本を紹介しておきます。
- 熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』(岩波書店)
- 熊野純彦『西洋哲学史 近代から現代へ』(岩波書店)
- 木田元『反哲学史』(講談社学術文庫)*21/08/11追加
これからちょっとずつページを増やしていくつもりなので、その都度参照にした本を挙げていこうと思います。これらの本の書評と要約をブログに上げているので、よろしければそちらもご覧ください。
熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』:書評と要約
熊野純彦『西洋哲学史 近代から現代へ』:書評と要約
それから最後に。
いかにも私が原著を読んだかのように書いてあるところがあるかもしれませんが、たいていは他の人の受け売りですので悪しからず。
哲学の始原 >>
色々と勉強させていただきます。よろしくおねがいします。
私にとって最高の哲学入門は『哲学人』ブライアン・マギー著でした。ブライアン・マギー氏の自伝なのですが、幼児期の素朴な疑問を解くために哲学を探求していく過程が、「素朴な疑問から哲学は始まっているんだ」と思わせてくれるところと「哲学的思索が人生に必須な人がいるのだ」ということを実感させられ、大変参考になりました。
ページを読んでいただきありがとうございます。理工系の人間を読者に想定しているところもあって、本格的に勉強したい人にはもの足りない内容かもしれません。しかし理工系の視点でのみ書ける内容もあると思われます。このサイトから何か得られるものがあれば幸いです。