モナド論 - 趣味で学問

モナド論

モナド論で有名なライプニッツはイギリスのジョン・ロックとほぼ同時期に活躍した人です。天才数学者として有名なライプニッツですが、哲学者でありそして政治家でもありました。しかし政治家としては大きな挫折を味わったようです。そしてその挫折は見果てぬ夢としてモナド論へと結実することになります。

1.自然科学勃興の時代

ライプニッツの時代、顕微鏡がすでに一般的に用いられていたようで、微細な差異への関心は、時代の趨勢でもありました。対象を細かく分けていって調べること、このこと自体が自然科学の基盤です。現代ではあらゆる自然科学分野で批判が巻き起こっている方法ですが、この批判はもっともであるとともに、彼らの時代から受け継がれたこの方法にとって代わるものは、いまだ見つかっていません。

ライプニッツの思想で重要になってくるのは個体や個物です。ライプニッツも顕微鏡での観察を行っており、天才と呼ばれる彼においても、その思想は時代の趨勢と無関係ではなかったでしょう。しかし、ライプニッツの思想は一般的な自然科学とは、違う方向に向かっているようにも感じられます。

2.個体

ライプニッツの思考の基本的な原理は、「不可識別者同一の原理」と呼ばれるもののようです。簡単に言えば、相異なるものは区別できて区別できないものは同じものだ、という考えです。この原理を用いてライプニッツが主張したいのは、存在するものはすべて識別可能なそれぞれの個体である、ということです。

ここに肉眼では見分けがつかない二枚の葉があるとします。しかしどれほどそっくりな二枚の葉であっても、顕微鏡で覗いてみれば、それぞれに異なる細胞のかたまりであり、二枚の葉のどこをとってみても、内部の形態全体が一致するものはありません。子細に観察してみれば、すべての個物はそれぞれに特有な「襞」をもち、他のすべての個体と区別できることになります。

3.モナド

3.1 個物

我々のまわりの世界はそれぞれに異なる個物からなっていますが、個物が個物であるって、どういうことでしょう。なにをいってるの?と思われるかもしれませんが、そのことは自明というわけではありません。ライプニッツは個物が区別されるためには、その個物を他から区別された個物たらしめる属性のすべてが、個物の中に存在しないといけない、他の存在者からの差異そのものが個物に内在していないといけない、と結論づけました。差異は複数の間で成り立つことがらに思われるのですが、そう言われればそんな気もしてきます。このことについてはこれ以上考えようがないのですが、いわゆる「モナド」は、こういった差異そのものを内に含む個物、という概念から出てきたと考えられています。

3.2 モナド

「モナド」とは「複合的なものをつくっている、単一な実体 substance simple」のことです。「単子」と訳されることもあります。これは相互に識別可能であり、それ自体の中に区別を有するものです。さらにライプニッツは、モナドはそれ自身に世界全体が凝縮されて、世界そのものを表出(expression)していると考えています。「モナドは窓をもたない」という表現が有名です。モナドは窓をもたないので外部から直接情報が入ってくるわけではないですが、だからといって世界から隔絶されているのではなく、世界を表出することで閉域でありながら世界とかかわっています。

以上のようなモナドの在り様は、容易に納得できるようなものではありません。ところでオートポイエーシス論やゲシュタルト・クライスにおいて、モナドの生物学的な解釈がなされています。ここでは臨床精神科医である木村敏の解釈を紹介しておきます。

オートポイエーシス・システムは閉鎖系だと言われていて、生命システムや社会システムが入力も出力ももたないというのは不思議な感じがします。しかしこれは「閉鎖」と「開放」を対立する二つのカテゴリーとみなしたことから来る、疑似的な問題と思われます。オートポイエーシス論では、生命は自らの境界を絶えず生み出し続けることで個体として区別されています。モナドそれ自体が境界を生み出し続ける、もっと言えば境界そのものであるならば、わざわざ内部と外部を透視する窓など持つ必要はないでしょう。

3.3 微分方程式

ニュートンとライプニッツの間での微分のプライオリティ争いが有名です。ほぼ同時期に二人は微分の考え方を導入したのですが、微分の導出にあたって二人の間には元になる思想に相違があったのではないかと考えられています。ライプニッツの微分記号はd/dtの形式で、これは微分方程式で使われる表記です。微分方程式を解くというのは、瞬間の関係式から、その関係を満たす関数(全体の関係)を見つけ出すことです。その瞬間が全体を表出していると考えて初めて、その瞬間から逆に全体を導き出すことができる、という考え方が出てくるのではないかと思われます。

4.見果てぬ夢としてのモナド論

1000年に一人の天才とも呼ばれるライプニッツですから、その思想は多岐に渡っており、簡略化したとしても紹介しきれるものではありません。ライプニッツの残した有名な表現には他にも「襞」、「予定調和」などがあり、またニュートンの絶対時間と絶対空間を否定してクラーク(ニュートンの代理)とやり取りをしたことも有名です。しかし天才と名高いライプニッツも、政治家としては大きな挫折を味わうことになります。ライプニッツは三十年戦争の最中に産まれ、政治家としてプロテスタントとカトリックの調停に奔走しましたが、30年にわたる教会統一運動は失敗に終わることになりました。

二枚の葉の顕微鏡観察の話に戻ると、二枚の葉の同じと見える箇所も、異なる形状の細胞が集まって同じに見えているのでした。ということは個々の細胞はそれぞれ異なっているのに、全体としては見分けのつかない調和された統一体であるといえます。このことと照らし合わせてみると、個々人はプロテスタントであろうがカトリックであろうが、神による最善で調和された一つの世界が成り立つ、と考えられるはずです。現実世界では調和は成立しなかったのですが、彼の見果てぬ夢はモナド論として結実することになります。

  • 参照文献1:熊野純彦『西洋哲学史 近代から現代へ』(岩波書店)
  • 参照文献2:木村敏『からだ・こころ・生命』(講談社学術文庫)

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

2 thoughts on “モナド論

  1. ≪…モナドそれ自体が境界を生み出し続ける…≫を、数の言葉ヒフミヨ(1234)に・・・
    数の言葉ヒフミヨ(1234)は、言葉の点線面
                  カタチ(〇△□ながしかく(『自然比矩形』))
                  演算符号(+ー×÷√=)
      をウマクウマク纏め上げ普遍言語化している。

  2.  ≪… モナド …≫を、「モナドは、〇か▢だ。]で、
    数の言葉の世界の自然数の本性について、【ヒフミヨイの歌】から数の言葉ヒフミヨ(1234)の演算構造(+-×÷√=)をカタチ(平面・2次元)からの送りモノとして4次元までが閉じてい(計算でき)るのを [モナドは、△だ。]から、【〇】と【◇】と【△】を「モナドは、カタチだ。]として、十進法の基における西洋数学の成果の符号(i e π)が内在するのを[モナド]と着地させたい。人(私たち)の脳(心・魂)が、カタチ(【〇】【◇】【△】)から数の言葉ヒフミヨ(1234)と言葉の点線面の分節が、数学の数式や方程式などと関係(縁起)していると観る。
     円環に内接する正三角形(△)と正四角形(◇)の回転の出会いで、四次元まで閉じてい(計算でき)るコトが、円環の12等分の点が数える自然数と関係(縁起)している。そして、演算符号(+-×÷√=)を創生し・させる。円環(2π(円周))から、数える自然数(n)を円環のn分割(1/n)は、次の様に
     [n(0)は、点と円環の分節を脳(心)が、[点と線]を混沌(カオス・空(?))と](?)
     n(1)は、点と円環の分節として脳(心)が点 と線を無意識に[始原』し・させるのを描き出す。
     n(2)は、線分の[半分こ]が数の単位【1】を脳(心)が 1+1=2(数が進むコト) と 円環(2π)の[1/2]での計算し・された[π]が、平面(2次元)数体(集合)での計算と生り・生らさせる。数学(数式(符号))の数としの【π】は、敢て線分(1次元)の数体(集合)では、√πで正四角形の辺(√π)の平方なのである。ここに、脳(心)が、点と線を無意識に[始原』し・させるのを〇にするか□(◇)かで、描き出されたモノが、連続(無限)か離散(有限)とに分かれる。人(私たち)の脳は、有限(離散)な思考しかできないのを数学は、円環(無限(∞))で連続を獲得し・させる。カタチ(平面・2次元)からの平面(面積単位)は、[極座標]では、【π】で「直交座標]では【1×1=1】となる。
     n(3)は、円環の3等分で√3正三角形の√3の線分が生れる。√3正三角形の[半分こ](辺1と辺√3
    の直角三角形)が数直線の単位【1】を生み・生ます。
     n(4)は、円環の4等分で√2正四角形の√2の線分が生れる。√2正四角形の[半分こ](斜辺(2)の直角二等辺三角形)の[半分こ]が数直線の単位【1】(斜辺(2)の(1/2))と平面(2次元)の単位【1】(1×1)を生み・生ます、[直交座標]の骨組み(軸)を創生し・させる。
     √nのnの等分よる分割点の出会いの合致点は、12等分で、この数学([極座標])の平面(2次元)からの送りモノの計算が、√3×√2=√6である。
     円環の√3正三角形・√2正四角形・辺1の正三角形・辺1の正四角形・辺1の正六角形・斜辺(2)の直角二等辺三角形・辺1と辺√3の直角三角形・白金比矩形(√3×1)などと数学の方程式や離散と連続の眺めが2次方程式の根と係数の関係(縁起)を通じて数学の方程式の係数の数体(集合)を眺めるコトができる。
     自然数のカタチ(平面・2次元)からの風景は、ながしかく(『自然比矩形』)であり[直交座標]の正比例と反比例の関係(縁起)から数の言葉ヒフミヨ(1234)が紡ぎだされる。 そして、[直交座標]は、【-1】(i²)で平面(1×1)を纏め上げる。
     この風景は、絵本「もろはのつるぎ」(有田川町ウエブライブラリー)に観られる。
     数の言葉ヒフミヨ(1234)を文殊菩薩で観ると、右手の剣が『自然比矩形』に隠されたつるぎ型で、左手の巻物(経典)に十進法の基における西洋数学の成果の符号(i e π)が書かれている。
     他方、数式からの眺めは、[オイラーの等式」の [ eiπ=−1+0 ]からの [ eiπ+1=0 ]を、「ヒフミヨイの歌」の心(魂・雲中供養菩薩・モナド)的にカタチの始原を、ある(任意の)線(紐)の[半分こ]からのカタチ(〇と『自然比矩形』)への変身(理)が数式から数の言葉ヒフミヨ(1234)の数の始原が、【0】(0=+1-1)からの送りモノの関係(縁起)からの【+1】と【-1】と、数学からの送りモノの【i】と【e】に【∞】を内在(隠)し、人(私たち)の脳が、数の言葉の世界のをカタチ(〇◇)の[半分こ」の操作(理)として無意識に生み・生れさせると観る。
     eiπ=−1+0 は、ある(任意の)紐を[半分こ」にし、数の言葉ヒフミヨ(1234)の【1】が生れ・生むながしかく(『自然比矩形』)のかどの姿を【i】(虚数)の姿で。日常の数としては、【π/2】(90°)、言葉としては、直角(角・隅)、垂直と水平の交点などに見られる。これを数学の世界(数式)では、1=(i²)×(i²)で、ながしかくでは、ある(任意の)紐の[半分こ」に、【1】を呈示し【i】(π/2)をカタチで現し・されて、[半分こ]の紐(【e】)は、直角三角形の【1】と[e-1」にし、この直角三角形を斜辺で引っ付けるとながしかく(『自然比矩形』)に生る。これを数学の世界(解析)では、【-1】(i²)を生み数学の扱える[直交座標]を創出し・させる。
     eiπ+1=0 は、ある(任意の)紐を[半分こ]にし、数の言葉ヒフミヨ(1234)の【1】を生み・生むのが円環に見てとれる。円環という実風景は、止まることのできない線(紐・1次元)のカタチで、直径が数学の平面([直交座標]・[極座標])では、【i²】(π)で、線分[2](直径([1+1(「-1」の絶対値))の[半分こ]から半径【1】を生み・生ませる結合が、(実直線[2]・π・180°)である。[半分こ」の紐の【1】を引かれた紐は回り続け直線と曲線の交点が(微分可能・微分不可能)な閉合を無限に数える点と連続(∞)をモツ実(連続な)直線を生む。この式の姿のかたちは、〇となる。回り続ける円環のエネルギーは、[半分こ」の紐(π+1)としてこの【1】を観るコトである。数学の平面・2次元の姿は、[極座標]を生み・生ませ[直交座標]と[極座標]とを繋ぐのは、【i²×i²】=【1】を生み・生ませる。
     カタチ(〇▢)と数式( e=[1]+[e-1」 ) ( π=[π+1」-【1】 )の左辺の姿には、[半分こ」の紐の操作により【i】(π/2)の姿を観る。
    カタチ(▢)からの[点]と[直線]の[分節]は、【i】(π/2)の姿で、静なる『自然比矩形』から[正四角形]で4つの【π/2】(【i】)を創り言葉の世界の[点]と[直線]と[面]を分節し・させる。そして、一次元の[1]と二次元の[1](1×1)を[同じ]とする。
    カタチ(〇)からの[点]と[直線]の[分節]は、【i²】(π・180°)の姿が[直径]で、動なる『ヒフミヨ矩形』の[半分こ」の『ヒフミヨ放射』と『ヒフミヨ渦巻』の無限(∞)の姿が[半径](【1】)と円環(円周・2π)である。
    カタチ(△)からの[点]と[直線]の[分節]は、実直線の進む方向(右(+) 左(-))を数学の[極座標]と[直交座標]での方程式による【△】の座標での位置の初期条件が、決めている。
     数の世界は、わからない【1】と分かっているがコスモスでない【π】そして、カタチを数式にする【i】(虚数)、カタチを捉える座標(平面)、十進法の基における西洋数学の成果の符号(i e π)の【e】が、数の言葉ヒフミヨ(1234)をカタチ(平面・2次元)からの送りモノとして観る。 
    [モナド]のカタチの【〇】【▢】の数学的創生過程は、静なる『自然比矩形』動なる『ヒフミヨ矩形』『ヒフミヨ渦巻』『ヒフミヨ放射』などに・・・ 
    【△】の数学的創生過程は、辺(√3)の正三角形から、辺(1)の正三角形6っつへの変身が、数の言葉の操作(数えるコト・分割・フラクタル)の仕業とみとれる。

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