負の数 - 一年 - 趣味で学問

負の数

1.負の数

中学数学では「負の数」なるものが出てきます。ある数を「引く」という操作から、「負の数」なるものを定義します。「-1」とか「-0.5」とか、数の前にマイナスをつけて表現します。例えば「3 – 1 = 2」という式から、「1を引く」という操作を「-1なる数を足す」と考えて、「3 + (-1) = 2」という風に考えます。なんでこんなことをするかというと、のちに都合がよくなるからです。今はそんなものだと思っておいてください。

この「負の数」なるものを定義したはいいけど、これはどんな数でしょうか。「負の数」を定義したということは「正の数」も定義できるはずです。正の数は+をつけて「+1」とか「+0.5」のように表現します。でもこっちは省略して、ただの「1」とか「0.5」と書きます。つまり今まで使ってきた数が「正の数」です。正と負なので、「負の数」は「正の数」の反対です。いったい何が反対なのかというと、実は数学では特段そのことを考えません。自然科学(学校では理科)などで利用するときに、その都度反対になるものが何か考えます。例えば東に進む距離を「正」と置いたら、その反対に西に進んだときの距離を「負」の数で表現したりします。

次に、数学的に負の数をどう扱うか見るために、数直線を思い出してみます。0から始まって、右にいくほど大きな数になっていきます(図1(a))。

今度は0の左側にも数直線を伸ばしてみます。数直線上を左にいくほど小さくなるので、0よりも左側にある数は0よりも小さい数です(図1(b))。そして0を超えて左側に行った数も、左にいくほど小さな数だと考えます。例えば「-3」と「2」を比べると、「-3」の方が「2」より左にあるので、「-3」は「2」より小さい数です。「-5」と「-3」を比べると、「-5」の方が「-3」より左にあるので、「-5」は「-3」より小さい数です。この0よりも小さくて0から左に遠ざかるほど小さくなっていく数が「負の数」です。このように、数直線上で、0をはさんで「正の数」の「逆方向」にある数を「負の数」とします。また負の数は正の数の逆の数ということから、ある負の数は、その数から-を除いた数(例えば-2のときの2)と0をはさんで逆の位置にある、つまり大きさが同じで正負が逆になっていると考えることができます。

2.負の数の計算

「負の数」を定義したので、この数がいままでの数、つまり正の数と同じように四則計算(足す、引く、かける、割る)ができるかどうかが気になります。例えば負の数「-2」を引くって、どういうことでしょう。3から「-2」を引くを式で書くと「3 – (-2)」です。この式の計算を考える前に、「-1をかける」を先に考えてみます。

ここで2=1×2のように、2は1に2をかけた数もしくは2に1をかけた数として書けることを思い出してみます。そうすると-2は2に-1をかけた数-2=1×2×(-1)「-2は2に-1をかけた数である」と書けそうです。そして図1(b)の数直線を見ると、負の数「-2」は正の数「2」の逆位置の数です。ということは「-2は2に-1をかけた数」であり、かつ「-2は0を中心にして「2」の反対位置にある」のだから、「-1」をかけることを、0を中心にして180°回転して逆方向に移動する、と考えることができます(図2(a))。

逆の位置に移動することをなぜ回転で表現するかというと、負の数の割り算が定義しやすくなるのと、高校数学ででてくる虚数(複素数)を理解しやすくなるためです。でもまあ、とりあえず数学ではそう考えると思っておいてください。

以上より「-1」をかけることを、数直線上で180°回転させると考えることができます。では「-2」にさらに「-1」をかけるとどうなるでしょう。さらに180°回転して元の位置、つまり「2」に戻ってきます(図2(b))。以上をまとめると、「-1」をかけることで、数直線上を0を中心に逆方向に回転すると考えることができます。そして「-2」をかけることは「2×(-1)」をかけることなので、2倍してさらに180°回転すればよいことになります(図2(c))。もしくは180°回転してさらに2倍すると考えてもよいです。この規則を適用した計算の具体例をいくつか書いてみます。

3×(-2) = -6
(-3)×(4) = -12
(-3)×(-2) = 6
(-2)×(-3)×(-4) = -24

となります。かけ算のときは-が奇数個あれば-(負の数)、偶数個あれば+(正の数)と覚えてもらってもかまわないです。

最初の方で「ある数を引く」ことを「負の数を足す」と考えると書きました。ここまでの考え方を適用していくと「3 – (-2)」を次のように計算できます。

3 – (-2) = 3 + {-(-2)}
= 3 + {(-1)×(-2)}
= 3 + {(-1)×(-1)×2}
= 3 + {1 × 2}
= 3 + 2
= 5

となります。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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