三角関数の合成 - 趣味で学問

三角関数の合成

加法定理の応用で、三角関数の合成と呼ばれるものがあります。位相と周期がそろったsinとcosは、振幅が異なっていても足し合わせると一つのsin(cosでもよい)になる、ただし位相がずれる、というものです。まずは公式を書いてみます。

\begin{align} a\sin \theta + b\cos \theta = r \sin (\theta + \alpha)…①\\ ただしr=\sqrt{a^2+b^2}、\sin \alpha=\frac{b}{r}、\cos \alpha = \frac{a}{r}を満たす。 \end{align}

二つの波が合わさった結果、位相はずれるけど一つの波になる、という特殊な場合についての公式です。問題はただし書きの部分で、ここがどういうことかわかりづらいです。

sinθ-√3cosθ=2sin(θ-π/3)…②の具体例で考えてみます。合成の手順が決まっていて、まずはrを求めてから、加法定理を用いて式を変形していきます。

\begin{align} a=1、b=-\sqrt{3}よりr=\sqrt{1^2+(-\sqrt{3})^2}=2\\ よって\sin \theta – \sqrt{3}\cos \theta=2(\frac{1}{2}\sin \theta + \frac{-\sqrt{3}}{2} \cos \theta)\\ =2\{\cos(-\frac{\pi}{3})\sin \theta + \sin(-\frac{\pi}{3})\cos \theta)\} \\ =2\{\sin \theta \cos(-\frac{\pi}{3}) + \cos \theta \sin(-\frac{\pi}{3})\} \\ =2\sin \{\theta + (-\frac{\pi}{3})\}\\ =2\sin (\theta – \frac{\pi}{3}) \end{align}

今までの加法定理の使い方と逆で、sinαcosβ+cosαsinβ=sin(α+β)のように左辺から右辺方向に式変形してます(四行目から五行目)。1/2はcos(π/3)でもあるのですが、角度がπ/3のときsin(π/3)=√3/2となり、二行目の-√3/2と符号が異なり加法定理が使えません。したがって加法定理を使って二行目から三行目の変形ができるように角度を選ぶ必要があります。実際に問題を解くときは、図1のような直角三角形を描いて解くとよいでしょう。

加法定理を適用できるようにこういう直角三角形を描けば求められる、くらいに覚えておいてください。-π/3のようによく知れた角度にならないときは、αを具体的に求めようがないので、「rsinα、ただしαはsinα=b/r、cosα=a/rを満たす」のように書いておけばよいです。かなり覚えづらい公式ですが、加法定理を使うための式変形だと思えば、まず斜辺の長さにあたるrを求めることとか、sinの係数であるaをa/rに変形してcosを引っ張り出すとか、そのあたりの変形の仕方がうっすらと見えてくると思います。

②の解をグラフにすると図2です。

二つの波が合わさって一つの波になっているのがわかります。
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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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