オートポイエーシス論の展開のために - 趣味で学問

オートポイエーシス論の展開のために

1.オートポイエーシス論の現状と今後の展開

最初に結論を言うと、オートポイエーシス論に関する研究は停滞気味です。ここ10年ほどは、オートポイエーシス論を敷衍して新たに知見を提示した著書は、ほとんどないのではないでしょうか。社会学者の大澤真幸によると、社会学一般においてニコラス・ルーマンは参照されることがほとんどなくなってきているそうです。オートポイエーシス論を敷衍して自説を展開した人で最も有名なルーマンでさえ、忘れ去られようとしているのだから、新たな議論が出てこないのも仕方ないことに思えます。

実はオートポイエーシス論のみならず、システム理論分野全般が停滞気味のようです。第二世代システムにあたる非線形科学(カオス系)もオートポイエーシス論と同じくらい言葉を聞かなくなりましたし、アフォーダンスもそうです。ニューラルコンピューティング(人工知能)も研究としては下火でしょうか。そんな風に理論系全般が停滞している状態ですが、その中でもオートポイエーシス論は人々の記憶からの忘却が際立っているように思えます。

オートポイエーシス論が参照されなくなってきている原因は、山下和也の指摘する定式化が不完全なこと、基本概念の定義が人によって異なることが大きいでしょう。しかし山下和也による概念のまとめにより、定式化と基本概念の統一が進んできたはずです。それでなお新たな議論へと発展していかない状態が現在も続いているので、何かしらの問題がオートポイエーシス論に内在しているかもしれません。しかしそのような根本原因はたいてい、具体的に理論を適用して詳細に検討して初めて明らかになるものです。

そこでこれから、実際にオートポイエーシス論を展開して、問題点を検証してみたいと思います。このサイトは入門サイトとして立ち上げたので、その目的からは少しそれますが、発展的な議論から基本概念が理解しやすくなることもあるでしょうから、誤りを恐れずに自分で論考を展開してみようと思います。「オートポイエーシス論の展開」における議論は、私が現在進行で考察を行っている内容なので、議論の正確性や妥当性には疑問符が付くことを断っておきます。

2.オートポイエーシス論の適用対象

具体的な事例へのオートポイエーシス論の適用はそれほど進んでいません。このサイトで紹介した生命システム、意識システム、社会システムの他に、精神医学や情報科学への適用が試みられていますが、個別的に優れた論考はあっても大きな潮流とはなっていません。適用対象や適用の仕方の選択は研究が進んでいない状態の方が自由度が高いので、現状、様々に適用の仕方が考えられます。

これから、このサイトで紹介した三つのシステムのより詳細な再構成を行い、動物行動から言語現象への一連の発展に対し、オートポイエーシス論による説明を試みてみようと思います。動物行動や言語現象を選択した理由は、単純に私の知識で考察可能なものからいこう、というだけです。適用と考察の対象をリスト表示すると次のようになります。

  1. 細胞システムを詳述
  2. 多細胞生命体システムの再考
  3. 動物行動のオートポイエーシス論による考察
  4. 表象・意識システムの再考
  5. 認識システムを定式化
  6. 動物の知能行動(洞察的行動)のオートポイエーシス論による考察
  7. 子供の言語獲得をオートポイエーシス論により説明
  8. 個人の言語の発展をオートポイエーシス論により説明
  9. 社会的な言語と個人に現れる言語の関係を考察
  10. 概念の再考

以上の内容を順不同で考察していく予定です。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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