意識システムの模式図 - オートポイエーシス論の展開 - 趣味で学問

意識システムの模式図

1.模式図化

図式化すると対象を理解しやすくなるだけでなく、思考枠組みの問題点も浮かび上がらせてくれます。オートポイエーシス論における意識システムを図式化して、現時点での記述の問題点を示してみようと思います。

2.意識システム(山下和也)の模式図

山下和也による意識システムの定義をもう一度下に示します。

  • 意識システム:身体による脳・神経系への攪乱をコードとして作動する、生命システムの一階言及システム。産出される構成素は表象でありその構造である表象の総体が意識。

この定義を元に、図1に意識システムの模式図を示します。グレーの円が構造で、矢印が産出プロセス、Sが基体でEが構成素です。下が生命システムで、その一階言及システムとして上の意識システムが成立します。右に示したのが生命(多細胞生命体)システムの自己言及で、身体による脳・神経系への攪乱とそれによる新たなコードです。

まず生命システムの構成素を器官とすると、その産出元である基体Sが何であるかはっきりしません。器官が器官たるには、個体発生という個体の歴史が必要ですが、その固有の歴史性を図に含めることができていないと考えられます。意識システムでも同様に表象(構成素E)の基体Sが何かわかりません。山下自身が、表象を産出する働き、つまりどのようにして脳の攪乱に由来して表象が産出されるのかがわからない、と述べていた通りです。

現在、表象の産出を説明できた人は一人もおらず、誰にも説明できない事象の生成を図示するには、これでよいのかもしれません。しかし高階の言及システムを考える場合、階層化されるたびに説明不能な産出プロセスが加わることになってしまうので、むやみに言及システムによる説明を積み重ねるべきではないでしょう。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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