アフォーダンスの定義 - アフォーダンス - 趣味で学問

アフォーダンスの定義

1.ギブソンによる定義

まずギブソンによるアフォーダンスの定義を示します。

  • アフォーダンス(ギブソン):環境が動物に提供するもの、用意したり備えたりするもの

これだけだとわかりにくいので、ギブソンの表現を引くと「陸地の表面がほぼ水平で、平坦で、十分な広がりをもっていて、その材質が堅いならば、その表面は(動物の身体を)支えることをアフォードする」、「我々は、それを土台、地面、あるいは床とよぶ。それは、その上に立つことができるものであり四足動物や二足動物に直立姿勢をゆるす」(佐々木正人『アフォーダンス入門』第三章)といったことで、行為を可能にする環境あってこそ行為が成立するんだ、という考え方です。

ギブソンはアフォーダンスを特定する何かが環境に存在すると考えたようです。そしてアフォーダンスを特定するものを「生態学的情報」と呼びました。この生態学的情報は外部の観察者に容易に見えてくるものではありません。眼や耳やその他の感覚器が感受する刺激と、我々が環境に知覚し、それによって行動を生起させている情報は、異なるものだからです。

2.光のアフォーダンス

2.1 独我論の排除

動物の周りにあって動物の行動を可能とするアフォーダンスのうち、光のアフォーダンスについてみてみます。動物が利用するのは、光源からの放射光よりも、身の周りでの反射光です。動物はこの反射光のネットワークから、大地のキメのパタンのような情報を見い出しています。

反射光は身の周りの構造を反映して実に多様であることでしょう。同一の動物種であれば、どの個体も同様の構造を反射光から読み取るでしょう。ギブソンの表現は下のようになります。

「たとえば、テーブルから収斂してくる収束光のすべての集合は、視点を変える単一の観察者によっても、視点の異なる多数の観察者によっても採集できるだろう」(佐々木正人『アフォーダンス入門』第三章)。
「これは単一の移動する観察者が同一のテーブルを見つづけることができ、かつ静止した観察者の群が皆同時に同一のテーブルを見ることができると主張する根拠である」(同上)。

同一の動物種でも個体ごとに知覚される世界に違いがあるでしょう。しかしそれぞれの動物種は種に応じた知覚器、作動器、神経系を持つので、認識される表象は種ごとの限定を受けるはずです。結果、その限定が多数者での意思の疎通や社会的行動を可能にしてくれるでしょう。心理学で問題となる独我論などは、考える必要もなくなってくれます。

2.2 包囲光の配列

包囲光はほぼ反射光で構成されるので、動物の周りの環境に依存した多様性を持ちます。また動物の位置が変化するごとに包囲光の状態は変化します(図1)。包囲光は周りの環境を受けて構造化されており、ギブソンはその構造を「包囲光配列」と呼びました。

包囲光配列は動物がいろいろなことを特定する情報源となります。例えば「色」と呼ばれているものは、物の表面の肌理のパタンの現れです。植物の葉の状態、岩石の風化の程度、食物のたべごろ等、あらゆることが肌理の構造として現れています。それらは微細な光学的配列に情報として存在していて、この情報がものごとに特定のアフォーダンスとなって動物の行動を可能にしてくれます。

次に動物の移動において現れる、包囲光の変化とそこに読み取られることについてです。例えば面の境界の現れの違いに対し、「斜面」や「崖ぶち」と呼ばれる平面構造を我々は読み取っています。図2(a)なら崖ぶちを、(b)なら斜面、というふうにです。

また見えの拡大や縮小は、自身の移動や対象の移動を読み取るための情報を与えています。

一方、環境の側の自律的な光学的変形には、何かが曲がる、縮む、伸びるなど、やわらかな性質をもつ物が動くことによるものが多くあります。これらは動物の動きであることが多く、視界の中のある一対象が固有の運動をしていることを知らせてくれます。動物はこのような情報を包囲光から読み取りながら、行動を決定しています。

3.佐々木正人による解釈

佐々木はアフォーダンスの概念を「環境にあって行為が発見している意味」として捉えています。また、佐々木はその著書の中で、ギブソンが発見したことは生きものの行為はいきものだけからはみえてこない、そのまわりに起こっていることと一つとして考えないといけないということだ、と述べています。ギブソンは環境が動物に提供するものと考えていて、プログラミング言語のオブジェクト指向の概念を連想します。ここには欧米的な「もの」化された世界観が元になっていると見受けられますが、他方、佐々木では動物の側からの働きかけ、主体としての動物という視点が含まれているように思われます。

  • 参照文献:『アフォーダンス入門 知性はどこに生まれるか』(講談社学術文庫)

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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