「アフォーダンス入門」について - アフォーダンス - 趣味で学問

「アフォーダンス入門」について

1.佐々木正人による「アフォーダンス」の導入

心理学の傍流に「生態心理学」と呼ばれる一分野があります。生態心理学を作り出したと言ってよい、アメリカの心理学者ギブソンが、「与える、提供する」を意味する英語の動詞アフォード(afford)から、造語のアフォーダンス(affordance)を作りました。ギブソンによるアフォーダンスの定義は「環境が動物に提供するもの、用意したり備えたりするもの」です。ギブソンの表現は下のようなものです。

「陸地の表面がほぼ水平で、平坦で、十分な広がりをもっていて、その材質が堅いならば、その表面は(動物の身体を)支えることをアフォードする」、「我々は、それを土台、地面、あるいは床とよぶ。それは、その上に立つことができるものであり四足動物や二足動物に直立姿勢をゆるす」(佐々木正人『アフォーダンス入門』、第三章)。

アフォーダンスを日本に本格的に導入したのは、心理学者の佐々木正人です。佐々木はギブソンの定義をもとに、アフォーダンスを「環境にあって行為が発見している意味」として捉えています。佐々木の考えでは、ギブソンが発見したことは、「生きものの行為はいきものだけからはみえてこない、そのまわりに起こっていることと一つとして考えないといけないということ」です。確かにギブソンの記述からは、それぞれの行動を可能にする環境があってはじめて、動物の行動が可能になる、という考え方が読み取れます。しかしギブソンの定義には、佐々木がそこに見い出した、行為を通しての主体による意味付けのような含意は読み取れないようにも思えます。実は佐々木はその著書『アフォーダンス入門』において、自身の意図を超えて、アフォーダンスの概念を用いて新たな思索を紡ぎ始めています。

2.このサイトでの「アフォーダンス入門」

このサイトでは、ギブソンによる元のアフォーダンス概念よりも、佐々木正人による展開の方を重視して、アフォーダンス入門を書いていきたいと思います。佐々木は『アフォーダンス入門』においてかなりの分量をさいてダーウィンの思索を紹介しています。ダーウィンを介して佐々木が見い出した思想は、マトゥラーナ・ヴァレラによる「オートポイエーシス」、ヴァイツゼッカーによる「ゲシュタルト・クライス」と類似する特徴を有しています。この著書の最後には、我々は環境に対し、身体という多数のシステムの集合で出会っており、こころとよんでいることの本当の姿は、この進行する多数との関係に起こりつつあることである、という佐々木の結論がまとめてあります。その箇所を抜き出してみます。

「おそらくこれが全身の知覚のシステムが活発に生き続ける動機なのである。無限のアフォーダンスの集合する環境に、ぼくらは一つの身体ではなく、多数の動きの集合で出会っている。オリジナルからはじめない行為についての議論が、行為の変化と環境とをひきはがしてしまったように、この相互に関連して変化する多数の動きからはじめない行為の説明も、行為をそれがあるところから分離する。ぼくらがこころとよんでいることの本当の姿は、この進行する多数との関係に起こりつつあることなのである。なぜぼくらが行為をし続けるのか、その答えはこの創造されつつあることにしかない。」 (佐々木正人『アフォーダンス入門』、第六章)

この表現にヴァイツゼッカーあるいは木村敏の思想との類似を見い出すことは、決して許されないことではないでしょう。このサイトの「アフォーダンス入門」の最後には、佐々木とマトゥラーナ・ヴァレラおよびヴァイツゼッカーとの類似と相違を示し、新たな思索の始まりが垣間見えることを期待して、ページを書き連ねていきたいと思います。
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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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