方向ベクトルと法線ベクトル - 趣味で学問

方向ベクトルと法線ベクトル

直線と同じ向きのベクトルを方向ベクトル、直角に交わるベクトルを法線ベクトルと呼びます。ベクトルの大きさはどのようなものでもかまいません。直線のベクトル方程式は、方向ベクトルか法線ベクトルがわかれば求めることができます。一つ注意点があって、平面上の点は位置ベクトルですが、点と点を結ぶベクトル、方向ベクトルと法線ベクトルは普通のベクトルです。位置ベクトルは平行移動できませんが、後者のベクトルは平行移動可能です。気にならなかったらそれでよいですし、気になったらゆっくり考えてみてください。

この二つのベクトルのうち、考えやすいのは法線ベクトルがわかっている場合です。まず直線上の動点をP(x, y)、定点をA(x1, y2)、法線ベクトルの一つをnベクトル=(a, b)とおき、始点を原点(0, 0)におきます(図1)。

このときAPベクトルとnベクトルは直交しているので、APベクトル・nベクトル=0です。左辺を式変形していって

\begin{align} \overrightarrow{AP} \cdot \overrightarrow{n}=(\overrightarrow{OP}-\overrightarrow{OA}) \cdot (a, b)\\ =\left\{(x, y)-(x_1, y_1)\right\} \cdot (a, b)\\ =(x-x_1, y-y_1) \cdot (a, b)\\ =a(x-x_1)+b(y-y_1)=0…①\\ \end{align}

これが法線ベクトルnで定点Aを通る直線のベクトル方程式です。①の左辺を展開してまとめると

\begin{align} a(x-x_1)+b(y-y_1)=0\\ ax-ax_1+by-by_1=0\\ ax+by+c=0(c=-ax_1-by_1)\\ \end{align}

となり、xy平面上の直線の一般形と同じになります。

もう片方の方向ベクトルがわかっている場合は、ちょっと導出が難しいです。直線の方向ベクトルの一つをlベクトル(a, b)とします。さらにこの直線は点A(x1, y1)を通り、直線上の動点がP(x, y)だとします(図2)。

図2からわかるように、APベクトル(x-x1, y-y1)は方向ベクトルと同じ向きを向いています。このことは比を使って、x-x1:y-y1=a:bと表現することができます。この比の式はb(x-x1)=a(y-y1)と変形できるので、右辺を左辺に移項すると

\begin{align} b(x-x_1)-a(y-y_1)=0…②\\ \end{align}

となり、これが方向ベクトル=(a, b)で定点A(x1, y1)を通る直線の式となります。②を式変形してまとめると

\begin{align} b(x-x_1)-a(y-y_1)=0\\ bx-bx_1-ay+ay_1=0\\ ay=bx-bx_1+ay_1\\ y=\frac{b}{a}x+c~(c=\frac{-bx_1+ay_1}{a})\\ \end{align}

となり傾きb/aで切片cの直線の式の形になっています。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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