分配法則 - 趣味で学問

分配法則

数式の変形は数学の基本で、図形問題とかを除くと山のように式変形を行うことになります。ここではとてもよく使用する計算規則である、分配法則について紹介しておきます。

厳密な話を除くと、数式の分配法則は次の式のように表されます。

a(b+c) = ab + ac

括弧の中のb+cを先に計算してから掛けるのではなく、括弧の外から掛かっているaと括弧の中のbを掛けてab、aとcを掛けてac、その後でこれらを足してab+acと計算してよいことを示しています。具体例でそうなることを確認しておきましょう。

\begin{align} 2(3+4) = 2×3 + 2×4 \\ = 6 + 8 \\ = 14 \\ \end{align}

です。この式の括弧の中(3+4)を先に計算すると7になって、それに2を掛けるので14となって、分配法則を使わずに計算したときと同じですね。

具体的な数の式なら先に括弧の中を計算すればよいのですが、例えば2(x+3)だと、xはその都度具体的な値が決まる数なので、すでに決まっている3と足し合わせて一つにすることができません。3(x+1)-2(x-2)のような式を見てみます。文字xで表現される数とその他の数を分けてまとめておけば、後でxの値が決まって代入するときに楽なのですが、括弧の中がxと普通の数の足し算なのでこのままではそれができません。そこで分配法則を適用すればこの式は

\begin{align} 3(x + 1) – 2(x – 2) = 3(x + 1) + (-2)×\{x + (-2)\}\\ = 3×x + 3×1 + (-2)×x + (-2)×(-2)\\ = 3x + 3 + (-2)x + 4\\ = x + 7\\ \end{align}

です。xが3と決まったときに、この式の値を計算するのに、元の式に代入するよりx+7に代入して10とする方が簡単です。xの値がその都度決まるごとに式の値が決まるので、最初は手間でも一度式を簡単にしておけば、何度も式の計算をするときはこちらの方が圧倒的に楽になります。

分配法則がなぜ成り立つのか、説明することはとても難しいです。二つの長方形の面積を使って説明している場合もありますが、どんな方法でも何か納得のいかなさが残ったりします。もちろんそれで納得がいったのならまったくかまわないです。こういう基本的なことほど説明が難しくて、数学では、なぜかは上手く説明できないけどほとんどの人がまあそうだろうと思えるようなことを、公理と呼んで先に正しいと決めてしまいます。証明もされてないのに正しいと決めてよいの?という疑問がどうしても残って、これは哲学における重大な問題の一つです。とりあえずはそれでよいとして話を進めさせてください。数学を利用するときは、ほんとにその規則を適用してよいか判断しないといけないのですが、その話はまたいつかしようと思います。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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