正規分布の利用 - 趣味で学問

正規分布の利用

前回に正規分布の説明を行ったので、今回はその実用の具体例についてです。確率密度関数が正規分布になる場合、全体の面積が1となることを利用して、ある幅の間に収まる確率をその面積によって求めることができます。例えば図1でaからbの間に収まる確率は下の積分計算で求めることができます。

\begin{align} f(x)=\frac{1}{2\pi\sigma}e^{-\frac{{x-m}^2}{2\sigma^2}}\\ \int_{a}^{b} f(x) dx \end{align}

といってもこれを毎回手計算するのはとても大変です。計算機を使えばよい話なのですが、後の統計推定のもとになっていることもあり、高校数学では正規分布表を利用して確率を求めます。

具体例で考えることにします。

「ある国の成人男性の平均身長が170cm、標準偏差が5cmの正規分布(確率変数X)に従うとわかっています。身長160から175cmの男性の割合はいくらですか。」

これを前回紹介した次の変換式により標準正規分布(確率変数はZ)に変換します。

\begin{align} Z=\frac{X-m}{\sigma} \end{align}

そうすると平均が0で標準偏差1の標準正規分布に変わります。全面積が1なので該当する幅の面積を求めれば、その値が求めたかった割合(その幅に入っている確率)となります。今求めたいのは確率変数Xが160≦X≦175のときの割合です。確率変数XをZに変換する必要があって、下のようにして変換できます。

\begin{align} Z=\frac{X-170}{5}\\ X=5Z+170\\ 160≦5Z+170≦175(160≦X≦175より)\\ -10≦5Z≦5\\ -2≦Z≦1 \end{align}

こうして-2≦Z≦1が160≦X≦175に対応していることがわかったので、このZの値の面積を正規分布表を用いて求めます。Zへの変換後は図2のようになっています。

正規分布表は0≦Zの範囲(0≦Z≦3.99など)しかありません。正規分布は左右対称形であることから、-2≦Z≦0の面積は0≦Z≦2と同じです。そのため-2≦Z≦1での面積は0≦Z≦2(-2≦Z≦0と同じ、図2の①)と0≦Z≦1(図2の②)の面積を足し合わせて求めます。

正規分布表の該当部分は図3のようになっています。縦の値がZの一桁目と少数第一位目で、横が少数第二位です。たとえばZ=1.96なら縦の1.9と横の6の列が交叉するところの0.4750の値をみます。Z=2.00の値0.4772が0≦Z≦2での面積です。同様にZ=1.00の値0.3413を求めて足すと0.8185となります。これが求めていた身長160cmから175cmの間の人の割合で、約8割にあたるというのがわかりました。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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