平方完成

二次関数y=ax2+bx+c…①の式をy=a(x+b’)2+c’…②の形に変形することを、平方完成と呼びます。この式変形により、二次関数のグラフの概形を描くことができるようになります。二次関数の性質として重要なのは、開き具合および凸の向き、軸、頂点の三つです。y=x2のグラフを基本として、②のaで上に凸か下に凸か、放物線が尖っているか開いているかが決まります。次にb’により軸がx=0(y=ax2のとき)に対しどれだけ移動するか、また頂点のx座標が決まります。そしてc’により頂点のy座標が決まります。
関連ページ:二次関数のグラフ

平方完成のやり方は公式として書かれていることも多いですが、公式を覚えなくても行うことができます。具体例で説明する方がわかりやすいと思うので、二例ほど示そうと思います。一例目はy=x2+4x+3です。

\begin{align} y=x^2+4x+3\\ =x^2+4x+4-4+3\\ =(x+2)^2-1\\ \end{align}

一行目から二行目まで何をやっているのか初めてだとよくわからないかもしれません。二行目で「+4-4」が突然現れてますが、4足して4引くので、何もしないのと同じでもちろん一行目と二行目は同じ式です。なんでこんなことをするかというと、+4をx2+4xに加えることで、x2+4x+4=(x+2)2を無理やり作りだすためです。(x+2)2の形を引っ張り出せばよいというのは、x2+4xの部分で決まります。展開したときにこの形になる場合を逆算すると、(x+2)2の形が出てきます。ここのところに関してはxの係数を2でわるとよい、と覚えておいてもよいと思います。二行目のx2+4x+4のところを因数分解して(x+2)2に変え、調整のために加えた-4ともともとあった+3を計算すると、三行目の平方完成した形になります。平方完成することで、軸がx=-2、頂点が(x,y)=(-2,-1)の放物線になるのがわかります(図1)。

次はちょっと面倒くさい形のy=1/3x2-x+1です。

\begin{align} y=\frac{1}{3}x^2-x+1\\ =\frac{1}{3}(x^2-3x)+1\\ =\frac{1}{3}\{(x-\frac{3}{2})^2-9/4\}+1\\ =\frac{1}{3}(x-\frac{3}{2})^2-\frac{3}{4}+1\\ =\frac{1}{3}(x-\frac{3}{2})^2+\frac{1}{4}\\ \end{align}

一行目から二行目では、1/3で括りだすときに-xが-3xなるところが見つけづらいですが、これはもう慣れです。三行目の-9/4は(x-3/2)2の-3/2を二乗すると9/4が出てくるので、それを打ち消すために-9/4しています。最終的に、下に凸でy=x2よりも少し開き気味の放物線で、軸がx=3/2、頂点の座標が(x,y)=(3/2,1/4)だとわかります。グラフは図2となります。

<< 二次関数のグラフ

ホーム

二次関数のグラフ

二次関数という名称ではなかったですが、すでに中3数学で二次関数は登場しています。y=ax2の関数という名称(このホームページの中学数学では「二次関数」で呼称)で登場していて、これにもう少し項を加えたy=ax2+bx+c…①の形でも、グラフにすると同様に放物線になります。①においてプラスでつながれたax2、bx、cのそれぞれを項と呼んでいて、複数の項を持つ式が多項式です。最高次(この式ではax2)の項の次数が一番重要で、ここの次数でグラフの概形が決まってしまいます。二次関数では最高次の項の次数が二次なので、y=ax2でもy=ax2+cでもy=ax2+bx+cでも二次関数です。

関連ページ:二次関数(中学数学)

式変形の仕方は次回以降に説明するとして、y=ax2+bx+cをy=a(x+b’)2+c’のように式変形するとグラフの概形を描くことができます。たとえばy=2x2-8x+5…②ならy=2(x-2)2-3に変形できて、グラフにすると図1のような関係になります。

②式のグラフは、y=2x2と同じ形(同じ開き具合)でx軸方向に+2、y軸方向に-3平行移動したものです。この二軸の平行移動のうち、y軸方向に-3平行移動の方がわかりやすいです。y=2x2とy=2x2-3を考えると、後者はどのxの値のときでも常にy=2x2から-3をしているので図2のように-3下に移動します。一次関数の切片の考え方と同様です。
関連ページ:一次関数

次にx軸方向に+2平行移動ですが、こちらはちょっとわかりづらくて、(x-2)2の部分の-2とは逆に+2平行移動です(図3)。xの値が常に2引かれているので逆に+2してやれば元のy=x2と同じ値になる、という感じで理解できなくもないです。正確な証明はそこまで難しくはないですが教科書にまかせます。

以上よりy=2(x-2)2-3は、2(x-2)2の係数2によりy=2x2と同じ形で、かつ(x-2)2でx軸プラス方向に2平行移動して、-3のところでy軸マイナス方向に3平行移動したグラフになります。次回は式変形(平方完成と呼ぶ)の仕方についてです。

平方完成 >>

ホーム

三角関数の合成

加法定理の応用で、三角関数の合成と呼ばれるものがあります。位相と周期がそろったsinとcosは、振幅が異なっていても足し合わせると一つのsin(cosでもよい)になる、ただし位相がずれる、というものです。まずは公式を書いてみます。

\begin{align} a\sin \theta + b\cos \theta = r \sin (\theta + \alpha)…①\\ ただしr=\sqrt{a^2+b^2}、\sin \alpha=\frac{b}{r}、\cos \alpha = \frac{a}{r}を満たす。 \end{align}

二つの波が合わさった結果、位相はずれるけど一つの波になる、という特殊な場合についての公式です。問題はただし書きの部分で、ここがどういうことかわかりづらいです。

sinθ-√3cosθ=2sin(θ-π/3)…②の具体例で考えてみます。合成の手順が決まっていて、まずはrを求めてから、加法定理を用いて式を変形していきます。

\begin{align} a=1、b=-\sqrt{3}よりr=\sqrt{1^2+(-\sqrt{3})^2}=2\\ よって\sin \theta – \sqrt{3}\cos \theta=2(\frac{1}{2}\sin \theta + \frac{-\sqrt{3}}{2} \cos \theta)\\ =2\{\cos(-\frac{\pi}{3})\sin \theta + \sin(-\frac{\pi}{3})\cos \theta)\} \\ =2\{\sin \theta \cos(-\frac{\pi}{3}) + \cos \theta \sin(-\frac{\pi}{3})\} \\ =2\sin \{\theta + (-\frac{\pi}{3})\}\\ =2\sin (\theta – \frac{\pi}{3}) \end{align}

今までの加法定理の使い方と逆で、sinαcosβ+cosαsinβ=sin(α+β)のように左辺から右辺方向に式変形してます(四行目から五行目)。1/2はcos(π/3)でもあるのですが、角度がπ/3のときsin(π/3)=√3/2となり、二行目の-√3/2と符号が異なり加法定理が使えません。したがって加法定理を使って二行目から三行目の変形ができるように角度を選ぶ必要があります。実際に問題を解くときは、図1のような直角三角形を描いて解くとよいでしょう。

加法定理を適用できるようにこういう直角三角形を描けば求められる、くらいに覚えておいてください。-π/3のようによく知れた角度にならないときは、αを具体的に求めようがないので、「rsinα、ただしαはsinα=b/r、cosα=a/rを満たす」のように書いておけばよいです。かなり覚えづらい公式ですが、加法定理を使うための式変形だと思えば、まず斜辺の長さにあたるrを求めることとか、sinの係数であるaをa/rに変形してcosを引っ張り出すとか、そのあたりの変形の仕方がうっすらと見えてくると思います。

②の解をグラフにすると図2です。

二つの波が合わさって一つの波になっているのがわかります。
<< 倍角の公式と半角の公式

ホーム

倍角の公式と半角の公式

加法定理を使って倍角の公式と半角の公式を導くことができます。慣れればすぐに計算できるので、公式を覚えるのが苦手な人は練習して導けるようにしておけばよいでしょう。

まず倍角の公式を示します。

\begin{align} \sin 2\alpha = 2\sin \alpha \cos \alpha \\ \cos 2\alpha = \cos ^2 \alpha -\sin ^2 \alpha = 1-2sin^2 \alpha = 2cos ^2 \alpha – 1\\ \tan 2\alpha =\frac{2tan \alpha}{1-tan ^2 \alpha}\\ \end{align}

三つとも2αをα+αと考えると、加法定理で導出できます。上から順に導いてみます。

\begin{align} \sin 2\alpha = \sin (\alpha + \alpha)\\ = \sin \alpha \cos \alpha + \cos \alpha \sin \alpha =2sin \alpha \cos \alpha \\ \end{align}

2αをα+αとして加法定理を適用しています。このことを覚えておけば、sinの倍角の公式は簡単に出てきます。

\begin{align} \cos 2\alpha = \cos (\alpha + \alpha) = \cos \alpha \cos \alpha – \sin \alpha \sin \alpha\\ = \cos ^2 \alpha -\sin ^2 \alpha…②\\ = 1 – \sin^2 \alpha – \sin^2 \alpha (\sin ^2 \alpha + \cos ^2 \alpha = 1より)\\ = 1 – 2\sin^2 \alpha…②~’\\ \cos ^2 \alpha -\sin ^2 \alpha = \cos ^2 \alpha – (1 – \cos ^2 \alpha)\\ =2\cos^2 \alpha – 1…②~”\\ \end{align}

cosは3通りの表現の仕方があって、sin2α+cos2α=1よりcos2α=1-sin2αに変形して②に代入してまとめると②’の形になります。sin2α=1-cos2αに変形して代入してまとめると②”の形になります。

\begin{align} \tan 2\alpha = \frac{\sin 2\alpha}{\cos 2\alpha}\\ = \frac{2\sin \alpha \cos \alpha}{\cos^2 \alpha – \sin ^2 \alpha}\\ = \frac{\frac{2\sin \alpha \cos \alpha}{\cos ^2 \alpha}}{\frac{\cos ^2 \alpha – \sin ^2 \alpha}{\cos ^2 \alpha}}\\ = \frac{\frac{2\sin \alpha}{\cos \alpha}}{1-\frac{\sin ^2 \alpha}{\cos ^2 \alpha}}\\ = \frac{2tan \alpha}{1-tan ^2 \alpha}\\ \end{align}

tanは一番導出が難しいです。上の二行目から三行目で分母分子をcos2αで割るところがわかりづらいですが、tanを作ることを念頭に式を眺めていれば思い浮かぶかもしれません。式変形に自信がない人はある程度計算練習が必要になります。ただしtanの公式は、高校数学ではsinとcosに比べて使う頻度が少ないので、面倒くさいなら飛ばしても別によい気もします。

次に半角の公式を示します。

\begin{align} \sin ^2 \frac{\alpha}{2} = \frac{1 – \cos \alpha}{2}\\ \cos ^2 \frac{\alpha}{2} = \frac{1 + \cos \alpha}{2}\\ \tan ^2 \frac{\alpha}{2} = \frac{1- \cos \alpha}{1+ \cos \alpha} \end{align}

これらの公式は倍角の公式を使って導き出せます。まずsinの公式の導出を示します。

\begin{align} ②’より\cos 2\alpha = 1 – 2\sin^2 \alpha\\ 2\sin^2 \alpha = 1 – \cos 2\alpha\\ \sin^2 \alpha = \frac{1 – \cos 2\alpha}{2}\\ \sin^2 \frac{\alpha}{2} = \frac{1 – \cos \alpha}{2}(\alphaに\frac{\alpha}{2}を代入)\\ \end{align}

最後のαをα/2に変えるところが思いつきづらいです。αは任意の角度なので、αと2αにおける1:2の関係が保たれていれば、α/2とαの形に変えても式としては変わらないです。式変形自体は難しくないですが、こちらもある程度練習しておかないと、この変形の仕方が出てこないかもしれません。

次はcosの公式です。

\begin{align} ②~”より\cos 2\alpha = 2\cos^2 \alpha – 1 \\ 2\cos^2 \alpha =1 + \cos 2\alpha\\ \cos^2 \alpha = \frac{1 + \cos 2\alpha}{2}\\ \cos^2 \frac{\alpha}{2} = \frac{1 + \cos \alpha}{2}(\alphaに\frac{\alpha}{2}を代入) \end{align}

sinのときとほぼ同じで②’から出発するか②”から出発するかの違いです。最後tanですが、これは簡単でsinとcosの半角の公式をtan2(α/2)=sin2(α/2)/cos2(α/2)に代入するだけです。といってもsinとcosの半角の公式を出してからじゃないと代入できないのでこれが一番面倒くさいです。やはりtanの半角の公式はあまり使われることがないので、いったん忘れてしまってもよいと思います。

<< 加法定理 三角関数の合成 >>

ホーム

加法定理

三角関数に関してこれは覚えておかないと、という公式に加法定理があります。証明はけっこうわかりづらい部類に入るので、これはもう単純に覚えておけばよいです。加法定理を覚えておけば、その後の倍角の定理や半角の定理、sinとcosの合成を自分で導くこともできます。

加法定理を下に示します。

\begin{align} \sin(\alpha+\beta)=\sin \alpha\cos \beta + \cos \alpha\sin \beta…①\\ \sin(\alpha-\beta)=\sin \alpha\cos \beta – \cos \alpha\sin \beta…②\\ \cos(\alpha+\beta)=\cos \alpha\cos \beta – \sin \alpha\sin \beta…③\\ \cos(\alpha-\beta)=\cos \alpha\cos \beta + \sin \alpha\sin \beta…④\\ \tan(\alpha+\beta)=\frac{\tan \alpha + \tan \beta}{1-\tan \alpha\tan \beta}…⑤\\ \tan(\alpha-\beta)=\frac{\tan \alpha – \tan \beta}{1+\tan \alpha\tan \beta}…⑥\\ \end{align}

このうちtanの公式はあまり使わない上に覚えづらいので、その都度計算するのでもよいでしょう。tanα=sinα/cosαから計算できます。下に⑤の導出を書いておきます。

\begin{align} \tan (\alpha + \beta)=\frac{sin(\alpha+\beta)}{cos(\alpha + \beta)}\\ =\frac{\sin \alpha\cos \beta + \cos \alpha\sin \beta}{\cos \alpha\cos \beta – \sin \alpha\sin \beta}\\ =\frac{\frac{\sin \alpha\cos \beta}{\cos \alpha\cos \beta}+\frac{\cos \alpha\sin \beta}{\cos \alpha\cos \beta}}{1-\frac{\sin \alpha\sin \beta}{\cos \alpha\cos \beta}}\\ =\frac{\tan \alpha + \tan \beta}{1-\tan \alpha\tan\beta} \end{align}

上の二行目から三行目は分母分子をcosαcosβで割ってます。この操作はわかりづらいかもしれませんが、最終的にtanで表現することを念頭に入れて二行目を眺めていれば、cosαcosβで割ってtanが引っ張り出せるのに気づくかもしれません。一度計算しておけばけっこうこの操作が出てくるので、計算で導出する練習をしておくか、それがいやなら頑張って覚えてみてください。

<< 三角比の不等式 倍角の公式と半角の公式 >>

ホーム

Older posts