生命現象のオートポイエーシス論的説明 - 三つのシステム - 趣味で学問

生命現象のオートポイエーシス論的説明

1.生命現象を考える

オートポイエーシス論による生命の定義は、身体を形作る働きの自律的な閉域と考えてよいでしょう。この定義は細胞システムの定義における細胞を身体に置き換えただけです。普通、それぞれに区切られた身体をそれぞれの生命と考えるので、生命システムの説明は身体を形作る働きでよいのですが、個体を超えて形作る働きは続いていくので、生命とは個体を超えて連接する働きだと考える人もいます。産出する働きの方を生命本体だと考えると、確かに個体には死と消滅が訪れますが、身体を形作る働き自体は受け継がれていくので、「生命そのものに死は存在しない」という考え方も妥当な考え方に思えます。さきほど当たり前のように「死」という言葉を使いましたが、「生命」を定義するのに生物学者が苦戦しているように、「生」と「死」の概念も自明なものではなく、オートポイエーシス論を用いるとどう表現できるのか検証してみないといけないでしょう。

2.生命現象のオートポイエーシス論による説明

ここから、やはり今までと同じように山下和也の考え方を紹介します。個人的には疑問に思うところもあって、自分の考え方は一通り山下による三つのシステムを紹介した後に、述べていこうと思います。

2.1 身体

多細胞生命体システムを、組織や器官を構成素とする、細胞システムの構造的カップリングによる高階層システムとして考えました。器官を構成素とするので、その構造は身体となります。細胞システムの名で呼ばれるのが、細胞を形作る働きの閉域なので、身体システムの語で指されるのも、細胞の集まりを身体として構成させ続ける働きの方です。

多細胞生命体システムの構成素が器官でその構造が身体であるので、構成素である器官はシステムではなくて、下位システムの構造です。そのため意識システムの作動元となる神経系も、構造であってシステムではありません。意識と神経系の関係については意識システムのところで説明します(21/6/11時点で未作成)。

2.2 生と死

まずは身体として区切られた個体について考えます。個体としてみれば、生命システムが作動し続けている状態が「生」で、システムの作動が停止し産出ネットワークが消失してしまった状態が「死」です。では、個体を超えて働きが引き継がれていく生命はどうでしょう。実は個体としての生と死の定義をそのまま当てはめることができます。「死が存在しない」と言っても、個体を超えて受け継がれていく働きは、それを可能にする環境があって成立するので、その働きのネットワークが消失してしまえばやはり個体と同様に死を迎えることになります。

個体に関する話題のうち、その他「発生」や「成長」を考えることができます。「発生」は生命システムの実現、「成長」のうち身長や体重などの単純な増減が構造変動、昆虫や甲殻類の変態、人間の第二次性徴などはメタモルフォーゼです。

関連ページ:システムのコード(2.構造的ドリフト)

2.3 運動

「運動」のようなことをシステムとして考えるのは、オートポイエーシス論でもやはり難しいです。生命システムの構成素を器官としたので、骨格系と筋肉系の器官に特化した生命システムの作動とひとまずは考えることができます。ただし、どんな運動であっても呼吸器系、循環器系、消化器系などを含む生命システム全体を巻き込んで行われていることは覚えておくべきでしょう。

2.4 細胞分裂と生殖(*工事中)

「細胞分裂」や「生殖」はシステム分化の一種と考えられます。すでに成立しているシステム(その個体)からシステム分化によって新しいシステム(別個体)が成立します。身体も生殖も細胞システムの構造的カップリングによる新たなシステムの成立であり、身体は同型性の維持がどうなされているか、発生や生殖は時間経過のうちで類型性を保ちながらも別形態へどう変化するか、同じ現象を別の視点から見てそれぞれ別の主題として扱っているとみなせるでしょう。細胞分裂や生殖は別のシステムの成立でありながら、構造の類型性を保つという特徴を持つので、遺伝や進化について考える必要があるでしょう。これらの生命現象は「コードのコピー」によって起こります。

2.5 遺伝(*工事中)

「コード」を用いた遺伝の説明は以下のようなものです。「生命システム」のコードの基本が「遺伝コード」です。実際には発現しない可能性もあるので、ゲノムは遺伝コードのプールであり、環境との相互浸透でその都度使用される遺伝コードが決まります。親から子へ受け継がれるのは遺伝コードのネットワーク形状の大枠だけで、子の遺伝コードはそのシステムの実現に際して新たに決まります。

自己修復は、遺伝コードが維持されていることによって、細胞システムがコード・ネットワーク上で自分の位置に合わせて分化することで結果として成されます。人間の傷の回復もイモリの足の再生も、形状再生機能に大きな違いがあるように見えても、その機構においては大きな違いは存在しないでしょう。

2.6 進化(*工事中)

山下の定義は「進化とは、新しい生命システムが別の生命システムの構造を環境として実現する際に生じる、遺伝コードの構造的ドリフトである」(山下和也『オートポイエーシス論入門』、第3章1節)というものです。「言い換えれば、ある生命体から、遺伝コード・ネットワークの概形そのものが異なる別種の生命体が生まれることである。前章で述べた概念を使えば、生命システムからの生命システムのシステム分化に際して生じる、遺伝コードの構造的ドリフトとなる」(同上)。

進化はあくまで生命システムの自律的作動であり、実際には継続的に作動し続けるということを獲得したものだけが存続してきただけですが、人間の目には進化が環境に適応して起きているように見えます。この機構を説明するために導入された言葉が「自然淘汰」で、あくまで自然が選んでいるように見えるという比喩としての言葉です。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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