位置ベクトル - 趣味で学問

位置ベクトル

高校数学のベクトルでわからなくなる理由の一つに、位置ベクトルの存在があると思います。そもそもベクトルは向きと方向を持つ量のことで、この二つが同じであれば平行移動しても同じベクトルです。自由に平行移動可能なもので位置を考えるということ自体がよくわからなくなります。自分の専攻ではあまりベクトルが必要とされなくて、位置ベクトルが物理学などでどう必要となるのか私にはよくわからないです。ベクトル解析などで使われていた気はするのですが。こんなふうにある分野の人にとっては用途不明でさえある位置ベクトルですが、大学入試では必須項目であったりもします。まずは位置ベクトルがどういうものか見ていきましょう。

平面上の点の位置は、始点を定めればx軸方向とy軸方向の移動距離の組で表現できます。この組をベクトルとして考えようというのが位置ベクトルです。図にすると図1(a)のように普通のベクトルと変わりありません。

位置ベクトルの始点はどこにとってもよくて、特に指定がないときは座標軸の原点にとってあると思っておいてください。点ABを結ぶ線分をABベクトルとして表現しておくと、ベクトルの和と差の計算規則を使って、ABベクトル=OBベクトル-OAベクトルのように始点Oのベクトルで表現できます(図1(b))。始点を変えて表現しなおすことは高校数学のベクトルでは必須の技術です。慣れるまではこの変換が大変なので、最初は問題を解くたびに図1(b)のような図を簡単に書いて変換するとよいと思います。

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また線分ABの内分点と外分点を、位置ベクトルOAベクトルとOBベクトルを用いて、下のように表現することができます。

\begin{align} 1.線分ABをm:nに内分する点Pの位置ベクトル\\ \overrightarrow{OP}=\frac{n\overrightarrow{OA}+m\overrightarrow{OB}}{m+n}\\ 2.ABをm:nに外分する点Qの位置ベクトル\\ \overrightarrow{OP}=\frac{-n\overrightarrow{OA}+m\overrightarrow{OB}}{m-n}\\ \end{align}

これはxy直交座標系における線分の内分点・外分点の座標の式(下の式)とそっくりです。

\begin{align} 1.点A(x_1,y_1)、点B(x_2,y_2)のとき線分ABをm:nに内分する点P(x, y)の座標\\ (x,~y)=\left(\frac{nx_1+mx_2}{m+n},~\frac{ny_1+my_2}{m+n}\right)\\ 2.点A(x_1,y_1)、点B(x_2,y_2)のとき線分ABをm:nに外分する点P(x, y)の座標\\ (x,~y)=\left(\frac{-nx_1+mx_2}{m-n},~\frac{-ny_1+my_2}{m-n}\right) \end{align}

ベクトル自身が二つの軸の情報を持っているので、x軸とy軸を分けて表示しなくても表現できる、そのように考えとよいでしょう。

次に内分点の具体例をみてみましょう(図2)。

線分ABを1:3にわける点Pは内分点の式より、OAベクトルとOBベクトルを用いて

\begin{align} \overrightarrow{OP}=\frac{3\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OB}}{4}\\ \end{align}

となります。OPベクトルはOAベクトルに近いので、OAベクトルの割合(3/4)が多くなってOBベクトルの割合(1/4)は少なくなった、そのくらいに考えればよいです。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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