脊椎動物の身体 - 趣味で学問

脊椎動物の身体

このサイトで紹介するのは脊椎動物の動物行動です。脊椎動物の行動を説明する前に、まずは脊椎動物全般に共通する神経系と身体全体の機構をまとめておくべきでしょう。そのためにはさらに動物の身体に関する系統分類学的な知識もあった方がよいです。細かいところは高校生物のページにまかせて(23/02/24時点で未作成)、このページでは脊椎動物の身体に関する概略を示そうと思います。

1 系統分類における区分

生物種は原則として祖先の得た形質や機構を再利用しています。動物種でそのことがはっきりわかるのが身体の発生で、系統分類学は身体発生の類似と差異で系統樹を描いています。まずは脊椎動物の系統樹での立ち位置を確認しておきます。

1.1 旧口動物と新口動物

系統樹を思い切って今必要なところだけ取り出すと図1になります。

進化の過程で旧口動物と新口動物に大きく分かれてきます。節足動物(甲殻類や昆虫類など)は旧口動物の一つであり、脊椎動物は新口動物に含まれます。移動や捕食といういかにも動物らしい特色は、節足動物と脊椎動物において最大となっています。ただしこの二種類の分類群には身体機構の大きな違いが存在します。神経系は身体を操作するために発達したことは間違いのないことなので、身体機構の違いが身体の作動をもたらす神経系の違いともなって現れてきます。

1.2 内骨格系と外骨格系

上記二種類の分類群は高度な身体運動が可能になっていますが、その身体構造について内骨格系と外骨格系で二分できます。内骨格系は身体の内側に中心となる骨格がありその周りに筋肉が存在します。外骨格系は外部に硬い殻があってその内側に筋肉があります。内骨格系が脊椎動物で外骨格系が節足動物です。どちらも筋肉の収縮で力を生じ身体を動かすことは同様ですが、身体運動の制御の仕方に違いがあると考えられています。内骨格系の制御の仕方として、後にニコライ・ベルンシュタインの考え方を紹介する予定です。

2 脊椎動物の神経系と身体

2.1 神経系と身体全体の関係

魚類から哺乳類まで、身体構造と神経系の構造はおおまかには同様です。神経系も身体の一器官ですが、身体を作動させる指令にあたる情報を作成する特殊な器官です。このページでは運動に直接関係する神経系に絞って説明することにします。

脊椎動物を代表して、人間の身体の中の神経系を図2に簡略的に示します。かなりの簡略化ですがひとまずこれで勘弁してください(上手く描けるようになったら差し替えます)。

作動器にあたるのは筋肉、腱、骨格などで、筋肉が収縮することにより身体動作が起こります。脊椎動物では身体内部に中心となる骨格があり、その周りに身体運動をひき起こす筋肉が配置されています。身体動作の機構について、詳しくは身体運動の制御のページで説明するつもりです(上記ベルンシュタインの考え方のページ)。

2.2 中枢神経系

脊椎動物の中枢神経系は大まかに脊髄・延髄、中脳、小脳、間脳、大脳で構成されているところは共通です(図3)。図3もずいぶんと簡略化してますが、ここではこれくらいでも大丈夫です。

構成のされ方はそれほど変わらなくて、大きく異なるのは各領域の容量です。図3(a)の魚類の脳では大きな領域である中脳や間脳は、図3(b)の哺乳類の脳では肥大した大脳の中の方にあって、外からは隠れて見えません。脳の基本構造が同じなので、魚類から哺乳類まで心的現実には類似するものがあるはずですが、はっきりしたことは原理的に明らかにすることができません。また各脳部位の役割も共通する場合が多いと考えられています。一方で、大脳の発達の量的な度合いと、身体運動の複雑さおよび高度な認識機能との間に対応関係があると考えられています。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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