言語に関連する事項 - 三つのシステム - 趣味で学問

言語に関連する事項

1.概念、記号、言葉

人間の場合は、認識システムよりさらに高次の言語による認識が成立しています。言語に関する議論では、「概念」、「記号」、「言葉」などがほぼ同様の意味で使用されています。この三つの言葉とも「意味」を伴って意識に捉えられる点で共通するのですが、言葉の意味とは何であるかという問いは、現在でも最大の難問の一つと考えられています。オートポイエーシス論によって説明する場合でも、言葉に関連する事象においては「意味」を無視するわけにはいかないでしょう。

オートポイエーシス論では、意識システムの一階言及システムとして認識システムを考えているので、言語に関わるシステムを認識システムの一階言及システムとして考えることができそうです。概念システムでも記号システムでも言語システムでもよいのですが、言語に関する新たな認識システムは、それよりも低次の生命システム、意識システム、認識システムに依存し、これら低次のシステムにとっては環境として攪乱を与えます。ここから具体的に理論を構築していかないといけないのですが、残念ながら言語に関してはまだ満足な説明はなされていません。

1.1 概念コード

社会システムとの接続を考慮して、山下和也が「概念コード」の言葉を導入しています。簡単に山下の考え方を紹介しておきたいと思います。山下は新たに次の言葉を定義しています。

  • 概念コード:認識システムのコード。連鎖して産出される認識表象のタイプを決める規則。
  • コード表象:システムの自己言及により、コードが認識表象として現れたもの。

概念の定義も難しいのですが、概念化には、複数の個的対象物をある特定の性質を共有する類種としてまとめ上げる効果があるので、そのような認識を限定する規則として概念コードが考えられているようです。そして言葉というのは、音や文字と結びついて概念が表象として現れてきたものと解釈できます。我々の認識は自律的といっても自由気ままに現れてくるわけではなく、認識のされ方や連鎖の仕方がある限定を受けており、その限定の仕方を誘導するのが概念コードです。さらに限定を誘導する規則そのものが表象として現れてきたものがコード表象で、言葉とはそういった規則や働きが音や文字などの表象と結びつくことで、新たな表象(コード表象)として現れてきたものと考えられます。

1.2 言語に関する事象をオートポイエーシス論で説明するために(*工事中)

言語に関連する事項をオートポイエーシス論で説明するための指針を考えてみることにします。言語現象への接近の仕方は色々あります。すでに成立している言語体系であったり、子どもが言葉を使い始める現場だったり、動物の意思伝達や類人猿の知能行動との違いなど様々です。上に挙げた場面は一見関係のないことに見えるかもしれませんが、一流の研究者の思想がつながりあっていて、それらの統合された体系を見い出すことも不可能ではないと思われます。ソシュール言語学、メルロ・ポンティの児童心理学、佐々木正人の発達心理学、コンラート・ローレンツの動物行動学、木田元または市川浩による現象学解釈、思いつくまま挙げてみてもきりがないほどです。

彼らの思想は心理学入門や哲学入門のページで紹介したいと思います。彼らの思想をオートポイエーシス論を用いて体系化する予定なのですが、こちらは数年の猶予を頂きたいと思います。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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