認識システム - 三つのシステム - 趣味で学問

認識システム

1.認識するということ

「認識」や「認識する」などは日常的に使用している言葉です。やはり日常的な言葉の方が説明が難しく人によって定義が異なっているので、はじめに次のような意味で使用することとします。

  • 認識:表象としての現れのみでなく、その対象としての現れを伴っていること

フッサールの「志向性」、コンラート・ローレンツの使う「ゲシュタルト知覚」もほぼ同様の意味とみなせます。ゲシュタルト知覚を例にとると、円のゲシュタルトなら、目の前のその図形が「円」として立ち現れてきます。図1(a)のように、網膜像を通して現れる表象は〇の配列のはずですが、我々には個々の〇の配列全体で「円」として現れてきます。このとき「円を認識する」のような言葉遣いをします。

認識は意識(表象)よりも高階層の心的事象と思われます。意識はある程度まとまった神経構造を持っている動物なら成立しているでしょう。動物がどのように知覚しているかは、原理的に人間にはわからないのではっきりとはいえないですが、身体構造や行動から推測するに、脊椎動物では認識という心的事象が成立していると考えて問題ないでしょう。人間の場合はさらに言語の意味が重要な働きを持ちますが、そちらは言語のページで考えることにします(21/06/21時点で未作成)。

2.認識システム

ここでも山下和也の考え方を紹介します。山下による認識システムの定義は次のようなものです。

  • 認識システム:意識システムの一階言及システム。意識(意識システムの構造)のシステム自身への現れを産出するオートポイエーシス・システム。「認識表象」を構成素とし、その構造が「認識」。

このシステムは意識システムと生命システムに構造的カップリングし、さらに依存しています。そして「このシステムは意識をその外部との区別において自分の構成素において現し、意識のこの現れを自分自身と見なすだろう」(山下和也『オートポイエーシス論入門』第三章2節(4))。自他を区別していること自体がこのシステムに現れてくるので、結果このシステムは自己としての意識の形で現れてきます。

認識表象は「内的表象」と「外的表象」に区別することができ、外的表象が各感覚器官に由来するものです。この区別は認識システムの自律的な作動によるもので、かつ、認識表象の内部における区別にすぎません。山下による認識の考え方は、表象を自己と他者の区別をつけて現すことに重み付けがなされています。

関連ページ:システムの自己言及意識システム

3.認識表象の産出プロセス

意識システムを元にして、認識システムの産出プロセスを考えてみます。意識システムは生命システムの一階言及システムで、認識システムは意識システムの一階言及システムです。意識システムでの記述を認識システムに当てはめると、次のようになります。

  • 認識表象の産出:表象の総体である意識が次の表象の産出に攪乱を与え、産出された表象が意識の状態を反映する。この自己言及を引き起こす攪乱をコードとして、認識表象を構成素とする産出プロセスの閉域が成立する。

意識システムにおける表象の産出プロセスが規定できなかったのと同様に、認識における認識表象の産出プロセスを規定することができません。高階層の自己言及システムを考える際に、この難題がついて回ることになります。

ただ一方で、生命システムの一階言及システムである意識システムに比べ、意識システムとその一階言及システムである認識との間に厳格な区分が必要であるか、はっきりとはわかりません。表象が連なっていく際に、それまでに成立した表象によって次の表象の現れが限定されることを認識と呼んでいることは、十分にありそうなことです。神経系の発達に伴い一時的に保存される表象が増大しているために、次の表象が限定もしくは新たな状態を伴って新生されているだけで、それを認識の語で区別を入れてしまったために難問として見えてきてしまっただけかもしれません。これ以上考えるためには、哲学における知覚の議論などが必要となるため、知覚(哲学)のページでもう一度考えることにします(21/06/21時点で未作成)。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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