漸化式

数列で連続する項の関係をもとに、一般項を求める操作を漸化式を解くといいます。例えばan+1=3an + 2(a1 = 1)のような数列の関係式が漸化式で、一般項を求めるとan=2・3n-1-1 です(求め方は次ページに示します)。ありとあらゆるタイプの漸化式があって大変難しいのですが、基本パターンとなるものが3種類あって、複雑なものもその3パターンになんとか帰着させて解くのが基本です。今回はその基本の3タイプについて、解き方を説明しようと思います。

最初のものが等差数列の漸化式で、an+1=an+dの形です。an+1-an=dの形に変形すると、一般的に二項の差がいつもdということなので、これは公差dの等差数列であることを意味しています。なので等差数列の公式を使ってanを求めます。例としてa1=2、an+1 = an +3の漸化式を解くと下のようになります。

\begin{align} a_n=a_1+(n-1)d\\ =2+(n-1)3\\ =3n-1 \end{align}

次が等比数列の漸化式で、an+1=ranの形です。ある項に特定のrをかけると次の項になるということなので、公比rの等比数列のことです。これも等比数列の公式を使って一般項を求めます。例としてa1=3、an+1=2anの漸化式を解くと下のようになります。

\begin{align} a_n=a_1r^{n-1}\\ =3\cdot2^{n-1} \end{align}

最後が階差数列の形のものです。これは例を示した方がわかりやすいでしょう。例えばan+1-an=2n+1(a1=1)のようなタイプで、二項間の差がnを用いた式になっています。ちょっとわかりづらいですが、二項間の差が2n+1という規則性を持った形で表現されているので、階差数列とみなして一般項を求めることができます。解いてみると下のようになります。

\begin{align} n≧2以上のときa_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1} b_k \\ =1+\sum_{k=1}^{n-1}(2k+1) =1+2\sum_{k=1}^{n-1} k + \sum_{k=1}^{n-1} 1 \\ =1+2\cdot\frac{n(n-1)}{2}+n-1\\ =1+n(n-1)+n-1\\ =n^2\\ n=1を代入して1^2=1=a_1より、a_n=n^2\\ \end{align}

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階差数列

一見、規則性が見出せない数列でも、各項の間の差を取ってみると、その差の方に規則性が見られることがあります。その場合はその差の和を使ってもとの数列の一般項をもとめることができて、その差の数列を階差数列と呼びます。

先に階差数列を使用する場合の、もとの数式の一般項の式を書いておきます。

\begin{align} もとの数列が\{a_n\}、階差数列が\{b_n\}のとき、もとの数列の一般項a_nは\\ a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k (n≧2)\cdots① \end{align}

具体例を使って式の意味を説明することにします。今、数列an = 1, 3, 7, 13, 21, 31, …だとして、この数列の一般項を求めたいとします。anの各項の差を取って新しい数列bnを作ると、bn = 2, 4, 6, 8, …という規則性を読みとることのできる数列ができあがります。初項a1=1にb1=2を足すと第2項a2=3になって、さらにb2=4を足すと第3項a3=7になることが読み取れます(図1)。

このことからもとの数列の第n項anは、a1にbnの各項を次々に足していって、bn-1項まで足すことで示すことができるのがわかります(①式)。bnは初項2、公差2の等差数列で、bn = 2nであることがすぐにわかります。数列bnの第n-1項までの和は等差数列の和の公式またはΣの計算を用いることで求められます。ここではΣを利用して次の計算で求めます。

\begin{align} \sum_{k=1}^{n-1} 2k = 2\cdot\frac{(n-1)\{(n-1)+1\}}{2}(n≧2)\\ =n(n-1)\\ \end{align}

そしてこの値を使うと、もとの数列anの一般項は下の式となります。

\begin{align} a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} b_k (n≧2)\\ = 1 + \sum_{k=1}^{n-1} 2k\\ = 1 + n(n-1)\\ = n^2-n+1 \end{align}

これで一般項anがもとまったわけですが、これはn≧2以上という条件のもとでの式なので、与えられているa1=1とこの式のa1が一致するか確認する必要があります。n=1を代入してa1=12-1+1=1となり一致するので、n≧2の条件がとれて、an=n2-n+1がもとの数列の一般項です。試しにn=6を代入すると、a6 = 62-6+1=31となり、最初に与えられた数列の第6項31と同じことが確認できます。階差数列は、規則性を読み取ることが難しい数列において、その一般項をもとめるための汎用性のある方法の一つです。よく利用されるので、何かしらの試験を受ける人は理解して利用できるようにしておくのがよいでしょう。

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Σの計算

数列の和を表す記号としてΣがあります。例えば数列anの初項から第n項までの和は、下のようにΣを使って書くことができます。

\begin{align} \sum_{k=1}^n a_k = a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n \end{align}

なぜかnではなくkを使ってakの形でΣ記号を利用することが多いです。Σ記号は下の数字から始めて一つずつ値を増やて足していき、上の数字のところまで足し合わせる規則になっています。

Σの性質として下のものがあります。

\begin{align} \sum_{k=1}^n (a_k + b_k) = \sum_{k=1}^n a_k + \sum_{k=1}^n b_k\\ \sum_{k=1}^n ca_k = c\sum_{k=1}^n a_k \end{align}

どちらもΣ記号の定義から理解可能です。覚えやすい規則なのでそのまま覚えてしまってよいでしょう。気になる人は、具体的に和の形(ca1+ca2+…canなど)にしてながめてみてください。わりと普通に納得できると思います。

Σを使った公式として次のものがあります。

\begin{align} \sum_{k=1}^n k = 1 + 2 + 3 + \cdots + n = \frac{1}{2}n(n+1)\cdots①\\ \sum_{k=1}^n k^2 = 1^2 + 2^2 + 3^2 + \cdots n^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\cdots②\\ \sum_{k=1}^n k^3 = 1^3 + 2^3 + 3^3 + \cdots n^3 = \{\frac{1}{2}n(n+1)\}^2\cdots③\\ \sum_{k=1}^n c = c + c + c + \cdots + c (cがn個) = nc\cdots④\\ \end{align}

②と③の公式は覚えづらい形をしていますが、そんなものだと割り切って覚えてみてください。①は等差数列の和の公式から簡単に求められるのですが、その都度計算するのも大変なので、これも覚えてみてください。③は①の二乗の形になっているので、セットで覚えると若干楽になります。④はもとの意味を考えるとすぐに出てくるので、覚えるかその場で考えるかどちらでもよいでしょう。

公式とは違うのですが下の形のものもよく使います。

\begin{align} \sum_{k=1}^n a^k = a^1 + a^2 + a^3 + \cdots a^n = \frac{a(1-a^n)}{(1-a)}\\ \end{align}

一見難しそうですが、実はこれは等比数列の和のことで、等比数列の和の公式を使って計算するだけです。この式のnに1から順に値を入れてみると、a+a2+a3+…anとなり初項aで公比もaの等比数列の第n項までの和なのでSn=a(1-an)/(1-a)です。初項と公比が同じなのでわかりづらくなってますが、等比数列の和のことだと気づけば難しくはないでしょう。

二例ほど具体的な計算をしておきます。

\begin{align} \sum_{k=1}^n (2k^2+ 3) = 2 \sum_{k=1}^n k^2 + \sum_{k=1}^n 3\\ =2\cdot\frac{n(n+1)(2n+1)}{6}+3n\\ =\frac{n(n+1)(2n+1)+9n}{3}\\ =\frac{n\{(n+1)(2n+1)+9\}}{3}\\ =\frac{n(2n^2+3n+10)}{3}\\ \\ \sum_{k=1}^n 2^k=\frac{2(1-2^n)}{1-2}\\ =2(2^n-1) \end{align}

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数列の和

数列の和の方がわかっているときに、その数列の一般項を求めることができます。初項から第n項までの和をSnとすると、n-1項までの和はSn-1と書けます。n-1項までの和がSn-1なので、それに第n項anを足せばSnになります。式で書けばSn-1+an=Snです。移項して式変形すればSn-Sn-1=anです。あたりまえと言えばあたりまえですが、この公式でSnからanを求めることができます。ただし注意点があって、式の中にn-1項の部分があって、第1項から始まるという条件からn-1が1以上、つまりnが2以上という条件がつきます。まとめると公式は次のものです。

\begin{align} n≧2のとき\\ S_n-S_{n-1}=a_n \end{align}

第1項のa1についてはanを求めたあとで、その式から求めたa1が適切であるか確認しないといけません。S1は初項だけの和?なのでa1でもあります。Snがわかっている場合はS1=a1が定められた値なので、求めたa1とS1が一致するか確認する必要があります。

実際に問題を一題やってみましょう。Sn=n2-3nのときanを求めるとします。解答は下のようになります。

\begin{align} n≧2のときS_n-S_{n-1}=n^2-3n-\{(n-1)^2-3(n-1)\}\\ =n^2-3n-(n^2-2n+1-3n+3)\\ =n^2-3n-(n^2-5n+4)\\ =2n-4=a_n\\ S_1=1^2-3\cdot1=-2、2\cdot1-4=-2と一致することより\\ a_n=2n-4 \end{align}

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近代の民主主義

民主主義は古代ギリシアで生まれたものではありますが、現在はそれとはまた違った性質を持った民主主義社会であると考えられています。近代民主主義社会(近代と現代はほぼ地続きとして使っています)にいながらその民主主義がどういうものかよくわからない、という状態がこのサイトでの民主主義ページ作成の動機でした。よくわからないながらにも、いまわかっている範囲で近代民主主義についてまとめてみることは有用なはずです。ここでは近代民主主義成立の歴史的経由を踏まえて、なぜ現在の政治制度が民主主義と呼ばれているのか考えてみることにします。

1.近代民主主義と呼ぶために

近代民主主義の特徴とは何かを挙げようとするすると、普通選挙制による議会制(間接民主主義)くらいしかすぐに思い浮かびません。もちろん性別や身分に関係なく選挙権があるというのは、近代民主主義において初めて実現したでしょう。しかしこれだけでは、国民が主権者となって自分たちで責任をもって決定するという、古代ギリシアで成立したであろう民主主義の理念を満たしているようには思えません。宇野重規によると、現代の議会制を民主主義と見なすためのヒントを、トクヴィルの思想に見つけることができるようです。

トクヴィルは政治体制としての民主主義だけでなくて、市民が自分たちで地域の諸問題の解決に参加する、その活動に民主主義を見出していました。彼の考えだと単純に政治制度で民主政が成立するのではなく、代議制でも地域の問題への市民の積極的なかかわりがあれば民主政と言えるということでしょう。古代ギリシアの民主主義のようには直接的に議会に参加できないとしても、「民主」主義というからには人々の自主的な活動が必要ということです。

2.歴史的経緯

近世から近代にかけての、欧米での民主主義の歴史的経緯を簡単にまとめておきます。近代民主主義の成立は、議会制の成立と拡張の歴史とも言えます。

2.1 イギリスの議会制

西欧では王権による中央集権化が進む一方で、これに対抗する社会の力も強まりました。王権など国家権力に相当するものが、社会に対して説明する必要が生じるのは、集権化した権力とそれに抵抗する社会集団の間で力の均衡がとれているときのみです。

この均衡がとれた国の一つがイングランドです。十七世紀の革命を通じて、十八世紀には議会主権が確立し、十九世紀以降に選挙権が拡大しました。要因としては、土地囲い込み運動などを通じて、早くから商業社会に適応した領主や地主が議会を拠点として王権に対抗したことが挙げられます。さらにこの連合に新興の商工業階級であるブルジョワが加わります。

2.2 アメリカ憲法制定会議

アメリカ独立戦争は民主主義のためというわけではなく、自らを英国人として理解する当時の人々において、英国からの不当な課税への反発の方が大きな要因だったそうです。結論をいうと、アメリカ合衆国憲法は妥協の産物で、ヨーロッパ諸国との緊張が続くなか、連邦国家としてのアメリカ合衆国をうちたてるという意志のもと、憲法制定会議が開かれます。

一般的な理解と違ってアメリカ「建国の父」たちは民主主義に警戒的だったのですが、民主主義的な側面を当時のアメリカに見ることは可能です。「建国の父」たちが理想としたのは、「高い知性を持つ、有徳な人々」による共和国であり、大きな国家で可能なのは、代議制を取り入れた共和政だと考えられていました。一方、フランス人貴族のトクヴィルは、アメリカ合衆国において地域の諸問題の解決に参加する市民の活動に、民主主義の力を見いだします。トクヴィルは政治体制としての民主主義だけでなく、社会のさまざまな側面においてみられる平等化の流れ、さらにはその流れの中に現れる人々の思考法や暮らし方までを含めて「デモクラシー」と呼んでいます。

2.3 フランス革命

1789年のバスティーユ監獄の襲撃を期に市民の不満が爆発しフランス革命がはじまります。財政赤字に苦しむ王権が約170年ぶりに三部会を開きます。三部会のうちの第三身分、平民の代表が進まない議論に不満を募らせ、自分たちを「国民議会」と宣言します。「国民とは平等な個人から構成される」という考え方から、世襲される貴族の権利を批判します。その後、革命が急進化していき、王国の一体性を体現していた国王の処刑により、革命は自らの正当性として抽象的な原理を必要とすることになります。フランス革命でその原動力となったといわれるルソーの『社会契約論』ですが、実際には革命が急進化する過程において必要とされたのがルソーの思想です。

フランス革命には特権階級が民衆を搾取し抑圧した結果起きたという側面とは別に、フランスの農民は農奴の地位から早くに脱しており、すでに隷属状態から脱していた農民が特権を享受する階層に不満を抱いたという理由があります。フランス革命が地主貴族層を破壊し、その上に、近代的な私的所有権の制度が打ち立てられることになりました。

3.民主主義と選挙制をつなぐ

近代民主主義の歴史から民主主義の特徴をもう一度考えてみましょう。民主主義というからには市民、民衆、国民を中心とした制度でなくてはなりません。そのためには市民の積極的な政治への参加が必要で、西ヨーロッパでは革命や選挙権拡大のための運動として、市民の政治活動が具体的な形として現れてきています。選挙を通して市民が国家としての意志決定をする、という点で確かに民主主義と呼べる政治体制と思えます。またアメリカ合衆国では革命のような派手さはないのですが、地域の諸問題に市民が共同して解決に参加するという、選挙とは違う形の民主主義があったと考えられるでしょう。現在は普通選挙制が民主主義とみなされていますが、このつながり方が必然というわけでもないでしょうし、それとは異なる形の民主主義もあり得ると思われます。やはり普通選挙制が実現されているから民主主義と単純に言うことはできなくて、これらをつなぐ何かしらの靭帯が必要とされているのは間違いないでしょう。

参照文献:宇野重規『民主主義とは何か』(講談社現代新書)

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