負の数の割り算 - 趣味で学問

負の数の割り算

負の数のページで「負の数」の定義と計算の具体例を示しました。その続きで一つだけ残していた、負の数の割り算についてです。割り算にはいくつかの解釈の仕方があります。今回は、割り算を掛け算の逆操作とみなして話を進めていくことにします。

割り算を掛け算の逆操作とみなすと、割り算を掛け算に直して計算することができます。その前に、割り算を分数のかけ算に変換できることを説明すべきですが、これが結構な難題なので、このことは前提とさせてください。例えば6÷3は6×(1/3)という風に、「3で割る」ことを「1/3を掛ける」ことに変換して計算することができます。このとき6×(1/3)の形で計算するために、約分という操作を行います。

\begin{align} 6 \times \frac{1}{3}=\frac{6}{3}\\ =\frac{2\times3}{3}\\ =2\times\frac{3}{3}\\ =2 \end{align}

という風に、分母と分子にともに含まれる数は打ち消されるので、一緒に消去してよいという規則が成り立ちます。言葉で説明すると「6は2×3だからそれに1/3を掛ける(3で割る)場合、2を3倍して1/3にする(3で割る)ので元の2に戻る」と表現できます。3÷6なら3×(1/6)で

\begin{align} 3\times\frac{1}{6}=\frac{1\times3}{2\times3}\\ =\frac{1}{2} \end{align}

になります。

では負の数で割るときはどうなるでしょう。-1を掛けるときは数直線上を180度回転させて、0を挟んで逆方向に持っていくのでした。例えば2×(-1)=-2、(-2)×(-1)=2のように計算できます。結論を先に言うと、割り算のときも掛け算と同じように、180度回転させればよいです。180度回転するときに左回りと右回りの二通りの回転の仕方があります。しかし180度回転するときは、左に回っても右に回っても同じところにたどり着きます。だから回転方向は気にせず、式を-1の掛け算または-1の割り算の形に変換した後、180度回転して数直線上での逆位置にもっていけばよいです。

計算の具体例を示すと、

\begin{align} 6\div(-3)=6\times(\frac{1}{-3})\\ =-1\times6\times\frac{1}{3}\\ =-1\times2\\ =-2 \end{align}

となります。負の数で割るときは、上の等式1行目から2行目のように、-1を外に取り出して全体に掛けてかまいません。-1を掛けるのも割るのも同じことだと考えると、このように-1を分子につけても分母につけても、全体の外に出しても、同じことになります。同様の計算で

\begin{align} 3\div(-6)=3\times\frac{1}{-6}\\ =\frac{3\times1}{-2\times3}\\ =-\frac{1}{2} \end{align}

となります。「-」をどこにつけても変わらないのですが、慣例的に分数の外側につけることになっています。

ここで先回りして、高校で習う虚数についても説明しておこうと思います。先ほど180度回転するときは左回りも右回りも変わらないといいましたが、もし90度回転だったらどうでしょう。このときは左回りと右回りで逆方向の位置に動いてしまいます。「掛けることで左回りに90度回転」して、「割ることで右回りに90度回転」する、虚数と呼ばれる数が考え出されています。前回のようなx軸とy軸が直交する平面を考えて、この平面上で90度回転するのです。虚数iは二乗して-1になる数で、実際にはこういう数を考えるために90度回転を考えたという側面があります。

虚数の計算には他にもベクトルの考え方が必要になるのですが、負の数の掛け算・割り算と対比すれば、理解しやすくなると思います。虚数に関しては高校数学をやるときの楽しみにとっておいてください。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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