等差数列

高校数学の数列で、基本となる数列の一つが等差数列です。それぞれの項の差が等しいので「等差数列」です。具体例の方がわかりやすいので、一つ示すと下のような数列です。

\begin{align} a_{n}=1, 3, 5, 7, 9, \cdots\\ \end{align}

初項が1で第2項は1に2を足して3、第3項は3に2を足して5というふうに、その項に2をたすと次の項になっています。この各項の差(上の例では2)を公差と呼びます。

等差数列には各項の差が等しいという規則性があるので、この規則性を使って一般的な第n項(一般項と呼びます)を求めることができます。上に挙げた数列anは公差が2なので、第2項なら初項1に2を1回たして1+2×1=3、第3項なら2を2回たして1+2×2=5です(図1)。

この規則性から第n項はどうなるかというと、2をn個より一つ少ないn-1回、初項1にたして、an=1+2(n-1)=2n-1です。anでは初項1、公差2なのでこの式になりました。このように初項と公差がわかればどんな等差数列でも記述できて、初項a、公差dとすると、等差数列の一般項は次の公式で表されます。

\begin{align} a_n=a+(n-1)d \end{align}

例えば初項5、公差-3の等差数列bn=5,2,-1,-4,-7…の一般項は、この公式を使って下のように計算することができます。

\begin{align} b_n=5+(n-1)(-3)\\ =5-3n+3\\ =-3n+8 \end{align}

図1に示したように、等差数列の一般項の公式は、等差数列の性質を考えて自然に導き出せることができます。覚えるのが苦手な人はその都度この性質から公式をその場で導き出してみるとよいでしょう。

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数列とは

読んで字のごとく、数を順番に並べていって、列を作ったものが「数列」です。規則性がないものでも扱えるはずですが、普通は何かしらの規則性を持った数の並びをしています。高校数学の数列で中心になるのは、等差数列と等比数列、数列の和、σ計算、漸化式あたりです。このサイトでもひとまずこの順番でページを作っておいて、他の内容は後から付け加えていくことにします。

まずこのページで「数列」での規則をまとめておきます。例えば自然数を数列で表すとして、下のような感じで書きます。

\begin{align} a_{n}=1, 2, 3, 4, \cdots, n-1, n, n+1, \cdots\\ \end{align}

それぞれの数を項と呼び、一番最初の数を初項、二番目なら第2項、n番目なら第n項です。上の数列なら初項はa1=1、第2項はa2=2、第n項はan=nのように書きます。第n項のanは一般項とも呼びます。
具体的な数の並びの中に規則性を見つけて、一般性を持たせた文字を使って記述することが一つの目標です。そうすれば、何項目かわかればその数を簡単にみつけることができたりします。例えば正の奇数は下のような数列で、bn=2n-1のように一般項を書くことができます。

\begin{align} b_{n}=1, 3, 5, 7, \cdots, 2n-3, 2n-1, 2n+1, \cdots\\ \end{align}

nは項数(何番目の項か)を示しているので、第2項b2はbn=2n-1のnに2を代入して、2×2-1=3のように計算できます。こんなふうに項数を表す文字を使って式として一般項を表現しておけば、その都度項数を代入するだけで簡単に特定の項の値を求めることができます。

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主権者とは何だろう

日本に住んでいる人の多くは、なんとなくでありながらも民主主義の方が開発独裁なんかよりよい、と思っているんじゃないでしょうか。しかしながら、よいと思っているはずの民主主義が何かよくわからない、そんな人が大半だと思います。私もその一人で、とり立てて理由があるわけでもなしに「民主主義に関連する本でも読んでみるか」と手に取ったのがルソーの『社会契約論』です。民主主義の思想の基盤を提供した本だと言われているのは知っていましたが、当時の私の知識ではもうそれくらいしか知るところがありませんでした。

驚くことにこの本、さっくりと読めます。しかし肝心の「主権者」の概念がなんのことかよくわかりません。一人一人の市民がそれぞれの主権者ではなくて、社会契約を結んだ市民が総体として一つの主権者です。そしてこの抽象的概念である主権者の意志が「一般意志」です。一方、これに対して一人一人の意見を集めたものは「全体意志」です。我々はなんとかして「一般意志」の方を見つけ出さないといけないはずです。ところで今、我々にとっての民主主義は普通選挙制のことで、最終的には多数決で政策を決定しています。それってどう考えても、選択しているのは「全体意志」の方です。

どうも隠れた前提条件があるようで、「公共なるもの」にとってよりよい選択は何かを考えて投票すれば、多数決で選ばれるものが一般意志で選ばれるものだ、という考え方が根底にあるみたいです。公共のため、という考え方は「共和制」の考え方とのことで、だとすると民主主義(民主政)をわざわざ使わなくてもよいように思えます。我々は国民主権と当たり前のように言っていて、民主主義国を謳うからには、国民が主権者であるということを説明しないといけないはずです。困ったときのwikiだのみでwikiページを見たんですが、あまり納得のいくものではなかったです。

これから民主主義に関連するページをいくつか上げていこうと思います。専門外の私が書くのでもちろん参照する文献が必要で、宇野重規『民主主義とは何か』を主なテキストとして、できるだけ話のつながりがわかるようにまとめていく予定です。最終目標は「主権者」と「民主主義」に自分なりに納得のいく答えをみつけることです。こちらの目標達成は長い道のりになりそうです。

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統計的仮説検定

ある事象の解釈が妥当かどうか、統計的に検証してみる方法があります。これは証明とは違い、妥当性はどの程度かを調べる方法です。高校数学ではこういった方法の中で一つだけ、推定した母平均の区間推定について知っておく必要があります。

先に問題設定をしておきます。ある母集団の平均が推定されており、また母標準偏差σは経験的にわかっています。しかしこの推定されている平均が正しいのか、現在は疑問が持たれています。そこでこの母集団からn個の標本を取りだし標本平均を調べ、この値を使って推定された平均が妥当かどうか調べてみることにします。

ごく簡単に仮説検定の考え方を言うと、示したいことと逆の仮説を立て、その仮説の通りだと調べたデータとなる確率がとても小さくなることを示すことで、そんな小さい確率でしか起こらないことが起きているということはむしろその仮説が間違っていたと考えて、元の仮説の方が妥当だったと示す、というものです。数1のところで出てきた背理法とよく似ています。

新しい言葉の定義がたくさん出てきますので、下の表にまとめておきます。

帰無仮説示したいことと反対の仮説で、この仮説の誤りを示すことを目指す。
対立仮説帰無仮説と反対の仮説でこちらが本来の示したい仮説。
区間推定帰無仮説を棄却するための設定を、確率分布の区間として設定する方法。
有意水準起こる確率が低いと考えるときの、その確率のこと。95%、1%、0.1%のいずれかを用いる場合が多い。確率が低いほど対立仮説の妥当性が高い。

今回は具体例で手順を示そうと思います。問題は次のものです。

「家の水槽にある魚が10匹いて、その魚は成魚で8cmくらいになるとされています。家の魚10匹のサイズを測ると7.0、8.5、9.0、10.5、10.0、11.0、7.0、8.0、9.5、10.5cmでした。平均をとると9.1cmであり、平均成魚サイズは8cmとは違っているかもしれません。有意水準95%で平均8cmかどうか区間推定で検定します。なおその魚の仲間全体で、全長の標準偏差は2.5だとわかっています(非現実的な設定の気はしますがご了承ください。標準偏差がわからないときはもう少し複雑な方法が必要です。)。」

手順は下のようになります。

  1. 帰無仮説を「平均成魚サイズmは8cmである。」、対立仮説を「平均成魚サイズmは8cmではない。」とする。
  2. 標本平均は正規分布N(8, 2.52)に従うと考えられるので、標準正規分布(確率変数Z)に変換する。
  3. 標本のデータと帰無仮説のm=8を用いてZの値を求める。
  4. 求めたZの値が有意水準95%、つまり-1.96≦Z≦1.96の範囲に含まれるかどうか確かめる。

では計算して確かめてみます。

\begin{align} 標本平均\bar{X}=\frac{7.0+8.5+9.0+10.5+10.0+11.0+7.0+8.0+9.5+10.5}{10}=9.1\\ Z=\frac{\bar{X}-m}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}\\ 実現値z=\frac{9.1-8}{\frac{2.5}{\sqrt{10}}}≒1.39\\ 実現値z=1.39は採択域に含まれるので帰無仮説m=8.0は採択される。 \end{align}

ということで-1.96≦Z≦1.96の範囲(採択域)に入っているので(図1)、標本平均の9.1cmというずれはそれほどめずらしくなく起こることなので、帰無仮説「平均成魚サイズmは8cmである。」を否定するほどのこともない(採択される)、という結論になりました。もし-1.96≦Z≦1.96の範囲外(棄却域)なら、5%以下の低い確率でしか起こらないことが起こっているのだから、これはむしろ最初の仮定「平均成魚サイズmは8cmである。」の方が間違っていたんじゃないかと判断して、帰無仮説が棄却されて対立仮説「平均成魚サイズmは8cmではない。」が採択されます。これはあくまでこっちの方が妥当だという判断です。そして「帰無仮説が正しいのに棄却してしまう誤り(第一種の誤り)」と「帰無仮説が間違っているのに採択してしまう誤り(第二種の誤り)」の可能性を捨て去ることができません。具体的な利用ではこのことを決して忘れてはいけないのですが、高校数学の範囲では、こんな話があったなくらいでよいので記憶に留めておいてください。

母平均の仮説検定では正規分布を利用しました。検定したい値によって分布が異なるので、それに合わせて多様な検定方法があります。また現実の問題に仮説検定を適用するには、帰無仮説と対立仮説を検証可能な現実的な仮説に設定する必要があって、けっこう難しいです。こちらは大学の卒論などで実体験してみてください。

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母平均と母比率の推定

前回、標本数nの標本を取ると、標本平均の分布は母平均mと母分散σを使って正規分布N(m, σ2/n)に近似できることを紹介しました。正規分布に従うということは標準正規分布に変換できるということです。そして今度は、標準正規分布を使ってある範囲に入る確率を求めるのではなく、ある確率の範囲に入る変数の値を推定することができます。例えば標本平均の値から、95%の確率で母平均があるであろう値の範囲を推定する、といったことが可能です。

まずは標本平均Xバーの分布を標準正規分布に変換すると下の形になります。

\begin{align} Z=\frac{\bar{X}-m}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}\cdots① \end{align}

正規分布を利用した確率の推定とは逆に、平均値を中心にして確率95%の範囲を考えます。95%の半分の確率0.475を与えるZの範囲は、正規分布表よりZ=1.96とわかります(図1)。図2のように-1.96≦Z≦1.96のとき、斜線部の面積は全体の95%となります。

次に、-1.96≦Z≦1.96に①式を代入して式変形すると下のようになります。

\begin{align} -1.96≦Z≦1.96\\ -1.96≦\frac{\bar{X}-m}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}≦1.96\\ -1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}≦\bar{X}-m≦1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\cdots②\\ m-1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}≦\bar{X}≦m+1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\cdots③\\ ②より-\bar{X}-1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}≦-m≦-\bar{X}+1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\\ \bar{X}-1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}≦m≦\bar{X}+1.96\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\cdots④\\ \end{align}

②の式から③と④の形に変形できます。上の式変形で得られた③の式は、標本平均が95%の確率で現れる範囲はこの範囲、ということを示していると解釈できます。ほとんど同じ形の式④は、母平均が95%の確率でそこに含まれているであろう範囲を示しています。というわけで実際に使用するのは④の式の方です。④の式を見返してみると、左辺は標本平均Xバーから、先ほど見つけた1.96の値をσ/√nにかけたものを引いてます。右辺はほぼ同じ形でXバーに足してます。この式より、標本平均Xバーと標本数nを使って母平均の範囲を推定することができます。

ちょっと注意しないといけないのが母標準偏差σで、母平均を推定するのに母標準偏差を使用してます。母平均がわからないのに母標準偏差がわかるの?というのは妥当な疑問で、経験則から母標準偏差はだいたいわかる場合があったりするので、そういうときにはこの式で推定できます。そうでないときは不偏分散を用いたt検定が必要だったりするのですが、こちらはもう高校数学の範囲外なので、ひとまずそのときのための方法が別にあることだけ覚えておいてください。

では一題、問題を解いてみましょう。問題は次のものです。

「ある池からある魚の成魚10匹を採取しました。その魚10匹のサイズを測ると9.0、12.5、9.5、8.5、14.0、11.0、8.0、10.0、12.5、10.0cmで、平均をとると10.5cmでした。信頼区間95%で少数第一位までで、母平均の区間推定をしてください。なおこの魚の成魚全体で、全長の標準偏差は2.5(cm)だとわかっています。」

\begin{align} 10.5-1.96\frac{2.5}{\sqrt{10}}≦m≦10.5+1.96\frac{2.5}{\sqrt{10}}\\ 10.5-1.5≦m≦10.5+1.5\\ 9.0≦m≦12.0 \end{align}

区間推定の結果は上のようになり、母平均は95%の確率で9cm以上12cm以下の間にある、という推定結果が得られました。

次に母比率の推定についてです。例えば1000個の製品を作ってそのうち不良品が5個なら、不良品率は5/1000で0.5%です。この抽出した標本での比率から、母集団での比率を推定しよう、というのが母比率の推定です。母比率の推定も考え方は同じで、標本比率をp0として、標本比率の標準偏差がp0(1-p0)/nとなるところだけが違うと考えてよいです。よって母比率pの推定は④の式とよく似た下の式になります。

\begin{align} p_0-1.96\sqrt{\frac{p_0(1-p_0)}{n}}≦p≦p_0+1.96\sqrt{\frac{p_0(1-p_0)}{n}}\\ \end{align}

こちらの問題は母平均の推定が理解できれば比較的容易に理解できると思うので、ここでは省略させてもらいます。

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