少し複雑な漸化式 - 趣味で学問

少し複雑な漸化式

漸化式を解くために比較的よく使われるのが、等比数列の形に式変形して解く方法です。ここでは典型的な問題を二例紹介しておこうと思います。

一つ目が「an+1=pan + q」の形の漸化式です。「an+1=pan」なら公比pの等比数列ですが、右辺に定数項qがあるために、このままでは等比数列の公式が使えません。このタイプの漸化式は特性方程式と呼ばれる式x=px+qをといてx=αをもとめ、an+1-α=p(an-α)の形に変形して等比数列の公式を用いて解けることが分かっています。具体例で説明した方が早いので、一題解いてみます。a1=1、an+1=3an+2の漸化式を解くと次のようになります。

\begin{align} 特性方程式はx=3x+2よりx=-1\\ よって与式はa_{n+1} -(-1) = 3\{a_n-(-1)\}\\ a_{n+1}+1=3\{a_n+1\}\\ ここでb_n=a_n+1とおくとこの式は\\ b_{n+1}=3b_n\\ b_nは初項b_1=a_1+1=1+1=2、公比3の等差数列より\\ b_n=2\cdot3^{n-1}\\ b_n=a_n+1よりa_n+1=2\cdot3^{n-1}\\ 以上よりa_n=2\cdot3^{n-1}-1\\ \end{align}

このようにして上の漸化式を満たす数列anを求めることができます。

次にもう少し複雑な「an+1=pan + qn + r」の形の漸化式を解いてみます。この解き方は数学一般でよく用いられる、式の形からこうできそうだからそう置いてみて係数比較して求める、という方法を用います。具体的な問題で説明することにします。a1=1、an+1=2an+3n-2の漸化式を解くとします。上で解いた漸化式とよく似ていて、式変形を工夫すれば等比数列にもっていけそうです。そのためには右辺の3nと-2の項をそれぞれ適切に分割して、左辺と右辺に分配すればよさそうです(図1)。

一つ目の漸化式だと右辺の定数項2を、3と-1に分け、-1を左辺に移項し、3をanの係数3で括ることで、等比数列の形にもっていってます。この漸化式も同じように分配してやれば、an+1+α(n+1)+β=2{an+αn+β}の形にできそうです。こう置いて解いていくと、下のようになります。

\begin{align} 与式をa_{n+1}+\alpha (n+1) +\beta = 2\{a_n+\alpha n +\beta\}と変形できると仮定すると\\ a_{n+1}+\alpha n + \alpha +\beta = 2a_n+ 2 \alpha n +2 \beta \\ a_{n+1}=2a_n + 2\alpha n – \alpha n + 2 \beta – \beta – \alpha \\ a_{n+1}=2a_n + \alpha n + \beta – \alpha \\ これはa_{n+1}=2a_n+3n-2と一致することより係数比較をして\\ \begin{cases} \alpha=3\\ \beta-\alpha=-2\\ \end{cases} \\ これを解いて\alpha=3, \beta=1より与式は\\ a_{n+1} + 3(n+1) + 1 = 2\{a_n + 3n +1\}\\ よってa_n+3n+1=(a_1+3\cdot1+1)2^{n-1}\\ a_n=(1+3+1)2^{n-1}-3n-1\\ =5\cdot2^{n-1}-3n-1\\ \end{align}

上で解いた例は漸化式の中では簡単な方です。もっと複雑な漸化式を解く必要のある方は、大学受験用の問題集等を参照してみてください。どの問題集でもたくさんのパターンの問題が載っていると思います。

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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