定積分を用いた面積の計算 - 趣味で学問

定積分を用いた面積の計算

前回の内容は定積分の計算が(ほぼ)面積の計算にあたることを示しました。実際に面積を計算するにはいくつかの注意点があります。定積分の式∫ab f(x)dxでf(x)の値が負のとき、f(x)dxは負の値になって、正の部分と打ち消したりして、定積分の計算結果が面積と異なってしまいます。そのため面積の計算の場合にはf(x)が正の範囲と負の範囲のどちらかになっているかで処理を変えないといけません。図1のような場合、f(x)、x軸、x=a、x=bで区切られた部分の面積(斜線部分の面積)は、途中のx=cのところで区切って、下の式となります。

\begin{align} \int_{a}^{c} f(x) dx ~- \int_{c}^{b} f(x) dx \end{align}

積分範囲がcからbまでのところではf(x)<0より、定積分の値は面積に-1をかけた値となっているので、さらに-1をかけて正にしてやればよいです。

また関数f(x)とg(x)で囲まれた部分の面積は、f(x)-g(x)の値を積分した次の計算で求めることができます(図2)。

\begin{align} \int_{a}^{b} f(x) dx ~- \int_{a}^{b} g(x) dx = \int_{a}^{b} (f(x) – g(x)) dx \end{align}

代入して計算することの面倒くささを考えれば、f(x)-g(x)を先に計算しておいた方が計算が楽です。

それから上でf(x)が負のときの面積計算の注意点を述べましたが、f(x)とg(x)で囲まれた部分の面積は、正負ではなく上下関係で処理が変わってきます。f(x)とg(x)が共に負の場合について、図3を例に考えてみます。

図3のように、f(x)とg(x)に十分な大きさの定数kを与えると、f(x)+kとg(x)+k共に正の値をもちます。この新しい関数で囲まれた部分の面積は、もとのf(x)とg(x)に囲まれた部分の面積と変わらないので、こっちの方を計算してみます。すると下のように、適当に与えたkが打ち消して積分計算はもとの関数f(x)とg(x)の場合とまったく変わりません。

\begin{align} \int_{a}^{b} \{(f(x) + k) – (g(x) + k)\} dx = \int_{a}^{b} (f(x) – g(x)) dx \end{align}

こういったことから、二つの関数で囲まれた部分の面積は、正負ではなく上下関係で考えればよいことになります。たとえば図4のような場合は、積分範囲aからbまではf(x)が上でg(x)が下、bからcまではg(x)が上でf(x)が下なので、面積計算は下の式になります。

\begin{align} \int_{a}^{b} (f(x) dx – g(x)) dx ~- \int_{b}^{c} (g(x) – f(x)) dx \end{align}

具体例を一題解いてみます。問題は「y=f(x)=x2-4x-2とy=g(x)=-x2+6x-10で囲まれた部分の面積を求めよ。」です。f(x)が下に凸、g(x)が上に凸なので、図5のような概形になるはずです。

二次関数によって接するとか交点がないとかもあり得るんですが、ここでは二つの交点で交わっているとして考えます。そうするとf(x)とg(x)の交点のx座標を求めて、その積分範囲で{g(x)-f(x)}を定積分すれば面積が求まりそうです。問題を解くと下のようになります。

\begin{align} f(x)とg(x)の連立方程式を解いて交点のx座標を求める。 \begin{cases} y=x^2-4x-2 \cdots①\\ y=-x^2+6x-10 \cdots② \end{cases}\\ ①-②より0=2x^2-10x+8\\ x^2-5x+4=0\\ (x-1)(x-4)=0\\よってx=1,4\\ したがってf(x)とg(x)で囲まれた面積は\\ \int_1^4 (g(x)-f(x))dx=\int_1^4 \{(-x^2+6x-10)-(x^2-4x-2)\}dx\\ =\int_1^4 (-2x^2+10x+8)dx\\ =-2\int_1^4 (x^2-5x-4)dx\\ =-2[\frac{1}{3}x^3-\frac{5}{2}x^2-4x]_1^4\\ =-2\{(\frac{1}{3} \cdot 4^3-\frac{5}{2} \cdot 4^2-4^2)-(\frac{1}{3}-\frac{5}{2}-4)\}\\ =-2\{(-\frac{13}{6} \cdot 4^2)-(-\frac{37}{6})\}\\ =\frac{13 \cdot 4^2}{3}-\frac{37}{3}\\ =\frac{171}{3}=57 \end{align}

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むつきさっち

物理と数学が苦手な工学博士。 機械翻訳で博士を取ったので一応人工知能研究者。研究過程で蒐集した知識をまとめていきます。紹介するのはたぶんほとんど文系分野。 でも物理と数学も入門を書く予定。いつの日か。

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